中国が行った政策の中でも世界的に有名なのが「一人っ子政策」。しかし、本来個々人に委ねられるべき家族計画に政府が干渉したことで、大きな弊害が生じているという。中国の結婚市場で今、どのようなことが起こっているのか? 『図解でわかる 14歳から知っておきたい中国』(太田出版/北村豊・監修/インフォビジュアル研究所)では、このように説明している。
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36年続いた一人っ子政策は、男女の出生率にいびつな差をもたらしました。一人しか子供がもてないため、跡継ぎとして男児を望む夫婦が多く、特に農村部では女児受難の時代が続きました。労働力にならない女児は、生まれても葬られてしまったり、戸籍のないまま隠すようにして育てられたりしたのです。
1980年代以降、胎児の性別判断ができるようになると、都市部でも計画的に男児を出産する風潮が高まりました。その結果、いまや結婚適齢期の男性が女性より1300万人以上も多いという「男性余り」の状態を引き起こしています。
そのうえ、女性が高学歴化し、社会進出するようになったため、女性が男性を選ぶ時代になりました。女性たちが理想とするのは、「高富帥」。背が高く金持ちでかっこいい、いわば中国版の3高です。それも都会に家や車をもつ男性であれば言うことなし。都会に住んでいても、農村の貧しい家庭から身を起こした「鳳凰男」は、都会育ちの女性とは価値観が合わず、結婚しても長続きしないと敬遠されがちです。
こうして、男性はふるいにかけられ、女性は高望みするあまりに、男女ともに独身者が増加。必死に相手探しをする農村部の男性とは対象的に、都市部では、高収入を得て自由な生活を楽しみ、自らの意思で結婚しない女性も増えています。
◆新居と結納金のない男性は論外!?
中国では、結婚前に男性側が「婚房」と呼ばれる新居を用意するのが、伝統的な習わしです。これは現在も変わらず、結婚相手も決まらないうちから、それどころか男児が生まれたらすぐに、婚房用の家の用意を始める家庭もあるほどです。
高度成長で不動産が高騰する現在、20代の若者が都会のマンションを買うのは容易ではありません。親の援助を得て、ようやくマンションを手に入れても、次は新婦の好みに合わせて内装をしつらえなければなりません。こうした新居費用に加え、結納金を納める風習があるため、新郎側には大きな経済的負担がかかります。たとえ本人同士の相性がよくても、お金が関わることとなると、両家の親たちが口出しし、縁談がまとまらないケースも少なくありません。
また、めでたく結婚しても、強くなった女性たちが離婚を厭わなくなったこともあり、離婚率が高まっています。一人っ子政策は、中国の家族のあり方を変え、様々な問題をもたらしているのです。
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日本は近年、生涯未婚率が急上昇しているが、結婚をしない理由の上位には経済的不安がランクインしている。日本も中国も、結局夫婦を繋ぐものは愛情よりも経済力? なお同書ではこのほか、大国・中国がかかえる社会問題、現代中国の普通の暮らし、中国社会の基礎となる中国共産党などをわかりやすく図解と文章で解説している。
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