平成という時代はまもなく終わりますが、新日本プロレス(以下「新日本」)の平成は、東京ドームとともに歩んできました。平成元年(1989年)4月24日、新日本は日本プロレス史上初となる東京ドーム大会を行ない、その後、毎年変わらずに開催されてきたのです。新日本が平成の30年間で刻んできた東京ドーム大会の中から、平成後期(2009年~2018年)の名シーンを振り返ってみましょう。
【1】『レッスルキングダムIII in 東京ドーム』 2009年1月4日 「師匠を超えプロレス界の頂点に!」
前年にIWGPヘビー級王座が全日本の武藤敬司のもとに流出したことで、新日本は挑戦者に棚橋弘至を指名。実は棚橋は新日本時代の武藤の付き人であり、以前対戦した際には時間切れドローに終わっていました。
死力を尽くしても勝てなかった師匠との対戦オファーに、棚橋は当初返答を保留。しかし最終的に挑戦を受諾したことで“師弟対決”が実現しました。結果は30分を超える激闘の末、棚橋が王座奪還。念願の師匠超えを果たした棚橋は年間を通して活躍を続け、年末のプロレス大賞でMVPを受賞。名実ともに業界の頂点に立ちました。
【2】『レッスルキングダム7 ~EVOLUTION~ in 東京ドーム』 2013年1月4日 「若き王者がプロレスを変えた!」
この前年2月に「ユークス」からカードゲームメーカーの「ブシロード」へと親会社が変わった新日本プロレス。その新たな顔となったのが、当時24歳だったオカダ・カズチカです。「新日本にカネの雨を降らせる男=レインメーカー」を名乗るオカダは、凱旋帰国後の初挑戦で棚橋弘至からいきなりIWGPヘビー級王座を奪取。20代のフレッシュな王者の誕生は従来のプロレスのイメージを変え、これまで興味がなかった人も惹きつけることに成功します。
その後、棚橋のリベンジマッチに敗れますが、年明けのイッテンヨンで3度目の激突を迎えることに。このときの対決は棚橋が勝利しますが、以後2人の闘いは新日本のドル箱カードとなり、幾度となく熱戦を繰り広げていきました
【3】『レッスルキングダム8 in 東京ドーム』 2014年1月4日 「同級生対決で柴田が覚醒!」
2005年1月に新日本を退団してから、他団体のリングを経て、総合格闘技で活躍するようになっていた柴田勝頼。そんな柴田が2012年8月、総合格闘家の桜庭和志と新日本のリングに現れ、「ケンカ、売りに来ました」という宣戦布告とともに復帰を果たしました。
当初は久しぶりのプロレスのリングに戸惑いがあったものの、徐々に本領を発揮。この東京ドーム大会では高校時代の同級生でもある盟友・後藤洋央紀と対戦しました。互いに心を許した関係だからこそ両者は一歩も譲らず、試合は壮絶な潰し合いに。後藤が激闘を制したものの、試合後は両者ともに満身創痍となりました。この一戦により柴田は覚醒。肉体と感情をぶつけ合う無骨なファイトスタイルを確立し、ファンの支持を集めました
【4】『レッスルキングダム11 in 東京ドーム』 2017年1月4日 「世界に注目されるスターが誕生!」
約10年前、日本のプロレスに憧れたカナダ出身のレスラー、ケニー・オメガが初来日すると、盟友・飯伏幸太とともにインディー団体を中心に活躍していました。その後、新日本にも参戦。ケニーは他の外国人選手と違い“ 大物外国人”という扱いだったわけではなく、良い試合を何度も行いながら、コツコツと自分を認めさせていきます。
そんな彼の評価を決定的にしたのが2017年のイッテンヨン。すでに“絶対王者”となっていたオカダ・カズチカをケニーは並外れた身体能力で追い込みます。試合時間は新日本の東京ドームのメイン最長となる45分超え。惜しくも敗れたものの、この一戦は“現代プロレスの最高峰”とも評され、ケニーを世界から注目されるスターに押し上げたのです。
【5】『レッスルキングダム12 in 東京ドーム』 2018年1月4日 「少年の夢が叶った大舞台!」
誰よりも東京ドームの大舞台に憧れ、少年の頃からそのメインイベントに立つことを夢見てきた内藤哲也。一度は夢の実現に近付きながらも、ファン投票によるメイン降格という屈辱により涙を見せました。しかし、翌年に「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」というユニットを結成すると、不遇時代が嘘のように人気爆発。その勢いは1年、2年後も冷めることがなく、2018年の東京ドームのメインでオカダ・カズチカと対戦することが決定します。
以前と違い、今回はファンの支持も最高潮。会場に鳴り響く万雷の「ナイトウ」コールの中、ついに夢を実現したのです。試合には残念ながら敗れたものの、それにより内藤の夢は「ドームで勝つこと」にアップデートされ、現在も続いています
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