人気シリーズ『X-MEN』の最新作『X-MEN:ダーク・フェニックス』が、いよいよ6月21日に公開されます。『X-MEN』のコミックスが発表されたのは1963年。アメコミの世界に新たなヒーロー像を築き上げたスタン・リーですが、当時の時代背景もあり、順風満帆のキャリアを送ってきたわけではありませんでした。
スタン・リー。本名スタンレー・マーティン・リバー。1922年12月28日、ニューヨークのマンハッタンにハンガリー系ユダヤ人移民の子として生まれました。後に『スパイダーマン』『アイアンマン』『ハルク』『ソー』『アントマン』そして『X-MEN』など数え切れないほどのキャラクターを生み出し、「マーベル・コミックスの神様」とも称されるスタンですが、実は長年ヒットに恵まれず、一時期は「コミックスはいい大人がやる仕事じゃない」とまで絶望した時期があったことはファンにも意外に知られていません。
そして、「ユダヤ人」という出自も大きく運命を左右します。現在のアメリカは世界でも最大のユダヤ人居住国家と言われています。しかしそのユダヤ人たちは、長年にわたり差別を被ってきたという歴史的事実があり、スタンも例外なくそのひとりでした。
ユダヤ人がどんな差別を受けていたか。当時からアメリカ人の主流は「WASP」 と呼ばれるプロテスタント系アングロサクソンたち。ユダヤ人は彼らのコミュニティーに所属できず、表舞台の仕事に就くこともできませんでした。一部のユダヤ人は表に出なくても仕事ができる出版業界や映画業界に手を伸ばし、正体を知られないようにWASPのような響きの名前を名乗るなど、生き残るための工夫をしながら自分たちの得意分野でビジネスをしていました。
当時シナリオのコンテストで何度も入賞するなど、物語を書くことが得意だった17歳のスタンはどうしたか? 幸運なことに、彼にはコネクションがありました。叔父の助けを借りて出版社のタイムリーコミックス(後にアトラスコミックスを経て、マーベル・コミックスに発展) に入社。社長はマーティン・グッドマン。スタンの遠縁にあたり、彼もまたユダヤ人でした。ユダヤ人の結束が、後の傑作へと繋がったのです。
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