いまや1つのジャンルとして完全に確立されたのがゾンビ映画ですが、ゾンビ映画をたくさん観ていると、危険にさらされやすい定番の行動パターンがあることに気が付きます。
例えば、ゾンビに追われている最中にクルマを発見し、慌てて乗り込む(大抵の場合、後部座席にゾンビが隠れている)。みんなで固まって動けば安心と大所帯で行動していたら、次第に仲間割れをしてしまう(そこから逃げ出した人は高確率でゾンビに襲われる)。そういう「ゾンビ映画あるある」を導き出してしまう行動は、世界的ベストセラーとなった『ゾンビサバイバルガイド』で、すべて悪い例として紹介されています。
映画化もされた『ワールド・ウォーZ』の原作者として知られるマックス・ブルックスによる同書は、その名の通り、ゾンビが出現した世界で生き延びるためのサバイバルガイドです。そのコンセプトから一種のジョーク本と受け取られがちですが、中身を無心で読めば意外にも、緊急時のサバイバル術を指南してくれる「防災ガイド」としても使えることに気が付きます。
その一例として、ゾンビに対処するための理想的な武器の選び方について見てみましょう。私たちは対ゾンビ武器としてもっとも有効なのは銃だと考えがちです。実際に海外の読者を想定して書かれた同書でも、銃についてかなりのページ数が割かれています。しかし同書に書かれているゾンビにもっとも有効な武器は、日本人でも簡単に手に入るものでした。それは鋼鉄製の「バール」(釘抜き)です。
銃は確かに有効ですが、デメリットも多い武器です。発砲音でゾンビを呼び寄せてしまう危険があるし、そもそも弾数だって有限です。ゾンビが何体いるかわからない状況下では、銃に頼りすぎることは危険なのです。その点、バールのメリットを著者はこう強調しています。
〈比較的軽量で耐久性があり、長引く近距離戦で用いるには理想的といえる。湾曲し尖った先端部によって、一撃で眼窩を突き刺しそのまま脳を破壊することもできる〉
大工用ハンマーでは射程が短すぎ、手斧も重量があるため動き回るゾンビの頭を正確に狙うのは困難。日本刀があれば最高の武器となりますが、滅多に手に入るものではありません。しかしバールならあちこちに売っており、ドアをこじ開けたり重いものを動かしたりといった本来の用途にも使えます。つまり、バールはゾンビがいなくても、災害時には携帯しておくべきツールともいえるのです。
そもそもゾンビパニックが生じた世界で起こる出来事は、自然災害によって崩壊した世界で起こる出来事ともあまり変わらないはず。暴徒に襲撃されるなんてこともあり得るでしょうし、食料や移動手段を確保するための知識は、どんな災害時でも無駄になりません。ゾンビパニックならではの出来事といえば、死体が蘇るくらいのことでしょうか。
だから同書に記されている対処法を覚えておくことは、現実の世界でも役立つのです。もちろん、ゾンビが現れたときにも役立つことは、言うまでもありません。
◆ケトル VOL.38(2017年8月16日発売)
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