市場が急激に拡大 人気を集める「2.5次元」の魅力は?

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現在、日本の漫画・アニメ界において、新たに確立されつつあるジャンルが「2.5次元」というエンターテインメント。漫画やアニメなどのいわゆる“2次元”のキャラクターを、現実の声優や俳優(=3次元)が演じる「2.5次元」は、2015年の時点で公演数が123タイトル、観客動員数が132万人を記録しています(日本2.5次元ミュージカル協会調べ)。

2015年末には、アニメ『ラブライブ!』に登場するユニットを演じた女性声優9人組のグループ「μ’s(ミューズ)」が紅白歌合戦に出場し、大きな話題を集めました。クールジャパン戦略のもと、アニメや漫画の国際展開が注目される今、2.5次元の舞台やライブは、海外向けに発信する期待のコンテンツ。『ラブライブ!』以外にも、2.5次元で成功を収めた作品は少なくありません。

【テニスの王子様】

2.5次元を代表するのが、同名漫画を原作とするミュージカル『テニスの王子様』。テレビアニメも2001年から2005年まで放映され、漫画・アニメ・ミュージカルのメディアミックスを成功させました。まさに新時代の「読んでから見るか、見てから読むか」を実現した作品です。

2003年の初演以来、今も人気が衰えない理由は、作品世界を巧みに3次元に変換したところ。舞台のキャスティングを決める際にも、2次元と3次元のシンクロを徹底するために、経験の豊かさより俳優本人の性格と原作のキャラクターとの親和性を重視し、演技経験の有無にこだわらずオーディションを行っているのです。そんな2.5次元の醍醐味を深く味わうためには、アニメや漫画を見てからの観劇がおすすめです。

【THE IDOLM@STER】

『ラブライブ!』と並び、2.5次元アイドルの人気を支えるコンテンツが『THE IDOLM@STER』(通称「アイマス」)です。こちらは何と、ナムコ(当時)が展開するアーケードゲームが原作。2005年からアイドル育成ゲームとして稼働し、家庭用ゲームやアニメへと進出していきました。

プレイヤーは芸能事務所のプロデューサーとして、新人アイドルたちを育てていきます。出演声優によるライブイベントも定期的に行い、10周年記念ライブでは、西武ドームに2日間で7万人以上の観客を集めました。劇場版アニメが公開された際のキャッチコピー「みんなとステージへ!」の通り、2次元を飛び出し、3次元でも息の長い人気を誇るタイトルです。

【KING OF PRISM by PrettyRhythm】

2.5次元は舞台やライブだけではありません。劇場版『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(通称「キンプリ」)は、2次元のアニメと3次元の映画館が地続きとなる「応援上映」を生み出しました。それは「コスプレOK、サイリウム・ペンライト持ち込みOK、声援OK」という、映画館の観賞マナーから大きく外れたものでした。

上映内では、登場する男性キャラクターがアイススケートをモチーフにした「プリズムショー」を繰り広げ、そこで観客はアニメのキャラクターを文字通り“応援”することが促されます。アニメと観客のコール・アンド・レスポンスが行われることも珍しくありません。劇場が一体となる興奮は口コミで広がり、わずか14館での公開が130館にまで広がりました。

【らき☆すた】

2.5次元という言葉が生まれる前から、2次元と3次元を結びつけるものとして、「聖地巡礼」がありました。アニメの舞台となった場所に実際に足を運び、登場人物たちが過ごした時間を追体験する楽しみ方です。地方の町おこしとしても注目され、今では全国に広まっています。

ブレークのきっかけとなったのは、2007年のテレビアニメ『らき☆すた』。埼玉県の鷲宮地域を舞台とした同作のヒットを受けて、地元の商工会も町独自のオリジナルグッズを作り、アニメとコラボしたイベントを現地で開催するなど、アニメファンによる観光を積極的に誘致しました。それは大きな経済効果となって表れ、『らき☆すた』と鷲宮地域は、アニメの人気をアニメ以外へもつなげる聖地巡礼の成功例となったのです。

◆ケトル VOL.35(2017年2月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。