放送文化の発展と向上に貢献した番組や個人に贈られる「ギャラクシー賞」。その名誉ある賞をDJパーソナリティ賞、ラジオ部門大賞と2年連続で受賞したのがTBSラジオの「荻上チキ Session-22」(以下、「SS22」)です。受賞理由では「ラジオの新しい在り方までも提示」したと評された同番組ですが、いったい何が“新しい”のでしょうか?
例えばラジオ部門大賞の受賞回では、薬物報道にまつわる「ガイドライン案」を作成。薬物への偏見や興味を煽るような現状の報道に対して、単に苦言を呈するだけでなく、メールやSNSを通じてリスナーの意見を集め、専門家と共にオルタナティブで具体的な提案を行ったのです。この取り組みは新聞などでも報じられ、大きな反響を呼びました。
番組のコンセプトとして、「知る→わかる→動かす」を掲げる「SS22」。リスナーに問題を知ってもらうだけでなく、ネットの活用で議論そのものにも巻き込んでいく。それが生放送ならではのライブ感とのかけ算になり、番組で提起したことが、放送終了後も広がっていくようなインパクトをもたらしたのです。
荻上チキさんは以前、「ラジオはメディアの最前線であり、最終防衛ライン」と語っていました。ほかのメディアが取り上げない、あるいは萎縮してしまう問題を、放送に必要なのは音声だけという身軽さを生かしてクローズアップする。「SS22」では、そこにネットの拡散力も加えることで、ラジオの持つ可能性を再認識させてくれました。スタートから4年半。本気で社会を動かそうとする番組がここにあります。
■荻上チキ Session-22
出演者:荻上チキ、南部広美ほか
放送開始:2013年4月1日
放送時間:月曜~金曜 22:00~23:55
◆ケトル VOL.39(2017年10月16日発売)
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