江戸時代後半に園芸ブームが存在 金持ちから庶民まで菊にどハマり

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新緑が美しいこの時期は、自然を愛おしむ気持ちがとりわけ高まる季節。近年、ガーデニングを楽しむ人が増え、盆栽の魅力が広く海外に伝わるなど、ちょっとした園芸ブームですが、実は19世紀後半の江戸でも園芸ブームがありました。特に人気が高かったのが「菊」。金持ちでも庶民でも、誰もが園芸にどハマりしていた時代があったのです。

菊ブームの曙は、平安時代に遡ります。当時の京都の上流階級の人々は、菊酒を飲み交わしながら菊の品評会を行い、菊の和歌を詠むことを楽しみとしていました。そんなエスタブリッシュメントな菊ですが、江戸時代になると徳川幕府に仕える武士たちを通じて、江戸庶民のもとにも伝わり始めます。しかし、庶民たちにとってはまだまだ「???」な代物。ここで上流階級とは異なる新たな楽しみ方を提供したのが、江戸の植木屋たちでした。

まず植木屋たちは、菊をできるだけド派手に見せることに力を入れました。大量の白い菊で富士山を製作したり、100種の菊を連結したりするなど、インパクト勝負の菊細工を次々と作ることで、江戸庶民の心をがっちり掴みます。さらに品種改良で新種の開発を継続。他の花と寄せ植えができる「花壇菊」など、斬新なものが市場に出回ることで、庶民は飽きることなく菊を娯楽として楽しみ続けました。

この留まることを知らない菊ブームに便乗したのが、当時一番人気の大衆芸能であった歌舞伎。舞台一面に菊を並べた通称「菊畑」という演目が新たに作られるまでに至ります。植木屋たちの絶え間ない営業努力が、歌舞伎界をも巻き込んだ江戸庶民の一大エンターテインメントを生んでしまったのです。

◆ケトル VOL.30(2016年4月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。