11月22日~23日にわたり、東京・渋谷区の代々木公園で、防災イベント「SHIBUYA CAMP 2014」が開催された。
同イベントは、被災した場合を想定し、普段はキャンプができない渋谷区の代々木公園で一晩を過ごすことで、自分を守る力を養う防災訓練。自衛隊にも訓練を教えるミッショントレーナー浅野竜一隊長の指導のもと、セルフレスキューレクチャーとサバイバルトレーニングの2部構成で行われた。
参加者たちは、今回のイベントテーマである「楽しくストイックに!」という標語の通り、設けられたたき火を囲んでのゲストトークや都会でのキャンプを楽しんだ。中でも関心を呼んでいたのは、防災をテーマにした絵本『ぞうぼうしパオ』のブースだ。
『ぞうぼうしパオ』は、長すぎる鼻がコンプレックスを持つ仔象・パオが、消防士の兄に憧れて自身も同じ道を目指すものの、その鼻のせいで失敗ばかりの日々で意気消沈。しかし、ある出来事をきっかけに自らの殻を破ってコンプレックスを克服する。そんなパオが自信を取り戻すまでの成長過程を描いた作品だ。
手がけたのは、コピーライターの小西利行さんとアートディレクターの水口克夫さん。ともに広告業界の第一線で活躍する著名クリエイターだ。そんな2人がなぜ、防災に関する絵本を作ることになったのか、水口さんに聞いた。
「小西くんが一緒にツイッターで絵本を作りたいとつぶやいて、すぐに僕がそれに反応して、絵を書くことになったんです。主人公はゾウと最初から決まっていて、そこから鼻の長いコンプレックスを抱えているけれど、危険をかえりみない勇気ある行動を取る消防士を目指す設定に広げました。それが防災に適したものになりました」(水口さん)
そして、出来上がった絵本を読んだ子どもが、水口さんの期待を上回る感想を口にしたという。
「編集者のお子さんがこの本を読み終わってすぐに“ぼく、消防士になる!”といってくれたんですよ。いろんな可能性がある子供がこういう本を読んで、人を助ける仕事をしたいと思ってもらえれば、子どものたちの防災の意識につながっていくのかな」(水口さん)
いつ来てもおかしくない震災。今を生きる大人の防災意識を高めることや将来への備えももちろん大切だが、次世代への教育や防災を啓発するメッセージも同じくらい重要。その点で絵本のもつ力は非常に大きいものだと言えそうだ。
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・ぞうぼうしパオ
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