青いバラや青いカエルが“幻”と言われるように、自然界には青い色素を持つ生物が非常に少ないことをご存知だろうか? そんななか、世界で初めて「青いニホンザリガニ」の繁殖育成を成功させたのが、室蘭水族館の飼育担当・大西勲さんだ。
ニホンザリガニは、北海道と北東北のみに住む日本固有のザリガニで、基本は茶褐色。昔は子供の遊び相手でもあったが、環境悪化などにより減少し、2000年に絶滅危惧II類に指定されたほどの希少な生き物だ。ニホンザリガニは飼育そのものが難しいため、安定・継続して繁殖を実現した例はほとんどなく、ましてや青色個体を繁殖させ、その子を育てたケースは知られていなかった。
「手さぐりのなか、まずやってみたのが、ニホンザリガニの生育環境を飼育ケースのなかに再現するというもの。夏場でも冷たい湧水をポンプで引いて掛け流しにしたり、ザリガニ自身が巣穴を掘れるように深さ10センチの砂礫や拳大の石を組んだり、日照時間を感じることができるように北側の窓に置いたりと、さまざまな工夫をしてみました」
その試みが功を奏し、2013年3月に産卵、7月には36匹の子ザリガニが孵化。そして2014年秋には、無事に生き残った22匹が美しい青色なった。
「アメリカザリガニなどにおいては『カロテンを含まない餌を与え続けると青化する』現象が知られていますが、今回の繁殖育成により、ニホンザリガニの青色は遺伝するということがわかりました」
だが、遺伝することがわかっただけでは大西さんの好奇心は終わらない。次は「どのようなしくみの遺伝なのか」を調べるため、2014年には「青×青」の交配だけでなく、「青×茶色」の交配も3組実施した。
「結果、体が青くなる特徴を持ったのは一腹の子ザリの半数のみで、残りは青くなる特徴がありませんでした。次は『青の因子を持つ茶色同士』を交配させ、メンデルの法則のように4分の1生まれるかを検証したいです。あとは、遺伝の解明も大事ですが、この美しい環境を象徴する生き物が絶滅しないように、環境保全を呼びかけていきたいですね」
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