今年も残すところ20日ほどとなり、様々なテレビ番組や雑誌が今年を振り返る企画を行なっているが、映画ファンが楽しみにしているのは、今年創刊93年目を迎える『キネマ旬報』の名物企画「キネマ旬報ベスト・テン」だ。
創刊5年後の1924年に始まったこの企画は、延べ120人の幅広い年齢層の映画評論家が、その年に観た映画を10本選び得点化して、その合算で順位が決まる仕組み。来年1月に発表されるものが第86回目で、米アカデミー賞よりも長い歴史を持つこの企画について、同誌編集長・明智智恵子さんにお話を伺った。
「この号は1年の総決算ということもあり、年間で1番売り上げが良いです。ただ一方で、読者には『このベスト・テンの順位にこだわらないでほしい』とも思います。本来、映画は観る人によって受け取るものが違い、安易に優劣が付けられません。たとえば昨年、外国映画部門は159位までありましたが、『誰かが1点でも入れた作品』ということにむしろ着目してほしいですね」
ベスト・テンの意味について、「映画の良し悪しを決めたいのではなく、『この時代にこの映画はこういう評価がなされた』という記録を残したい」と語る明智さん。映画の評価や批評は、その時代を色濃く反映し、同じ作品でも、50年前と現代では評価は同じではないそうだ。
「時代が変われば評価も変わる。読者の方でも、長年買い続ける年配の方もいれば、古いバックナンバーを買って読み比べる若い方もいます。私たちは、ベスト・テンを通じて、時代が持ち得た価値観を未来に伝えたいと強く思っています」
ちなみに明智編集長の好きな映画ジャンルは「アクション・エロス・バイオレンス」。その理由は、「テレビの規制が進んだ昨今、密封された映画館という空間の中でしか見られないから」だそうだ。
◆ケトル VOL.09(10月14日発売/太田出版)
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