世界の貧困層を描いた『絶対貧困』で俄然脚光を浴びたノンフィクション作家の石井光太と、「石井の著作群に共感した」というラジオパーソナリティの小島慶子が、東日本大震災発生11日後に対談を行った。作家とラジオパーソナリティという、伝えることを生業とする2人は、他者に対する「ツッコミ」についてこう語る。
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石井:自分は間違っているんじゃないかとか、あいつは間違ってるんじゃないかとか、どうだろうああだろうこうだろうっていちいち考え出したら、何にだって文句言えるし、何にもできなくなる。たぶん、僕も小島さんも、あっちこっちで叩かれている(笑)。自分を通せば通すだけ叩かれますからね。
小島:ツッコミはねぇ、やらなくていいですよね。私思うんですけど、たぶん人間の脳みそって、ツッコミは三歳ぐらいから始めてる。原初的な機能だと思うんですね。危険を察知するために必要な本能なのかもしれないんですけど、でもツッコミって、小利口そうに見えるけどあんまり高等な脳の使い方ではない。
石井:むしろ一番、脳みそ使ってないんじゃないかってぐらい。
小島:一番迂闊にできることですよね。ネットを見れば分かると思うんですけど、発言の機会が得られた時に最も迂闊に発言する人間が何をやるかって、大抵ツッコミですよね。それはまったく、かっこよくない。自分の知的耐久のなさを露呈する行為ですよ。
石井:ツッコミ始めるとね、自分に対しても他人に対しても、キリがなく無限にできますからね。ツッコんだって何一つ楽しいことないですよ。しかも、大抵見当違いなことを言っている(笑)。ツッコんだってツッコまれたって楽しくない。
小島:ツッコんで仕分けていくことよりも、あらゆるものの中に色んな可能性を見つけていく、可能性を留保していくっていうことのほうが、しんどいけれども健全だと思うんです。
※クイック・ジャパンVol.95
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