浦島太郎の時代から日本にはなじみ深い動物であるカメ。カメの特徴といえば、あの硬い甲羅だが、実は「カメの甲羅はどう進化したのか」については、19世紀から議論されていたものの、いまだ解明されない生物学上の謎だった。その謎を解明し、「カメの甲羅は肋骨が変形したもの」としたのが、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターの平沢達矢先生が在籍する研究グループ。なぜカメの甲羅は肋骨が進化したものだと決定づけられたのか?
「これまで、カメの甲羅(背甲骨格)は皮骨と同様に皮膚の深層部分にある真皮でできると信じられていました。でも、我々の研究グループは、カメの甲羅は、真皮より深い位置、肋間筋(人間ならば肋骨の間にある筋肉)あたりで作られるのではないかと推測。ただ、カメは肋間筋が退化しているので、この発生過程を確認するには細胞1つ1つの形を区別できるような正確な組織学的観察が必要でした」
そしてその課題をクリアした上で、カメの背甲骨格とニワトリの肋骨の発生を比較し、「中間段階」に相当するような動物が、絶滅動物の中にいたのではと予想。中国南西部で発見されたシノサウロスファルギスという、2億4500万年前の爬虫類の化石が、それに相当することが分かり、「カメの甲羅=肋骨」でることが解明された。しかし、カメはなぜ甲羅を持つようになったのだろう?
「アルマジロなどの動物は防御のために皮膚の中に皮骨を発達させるようになったと考えられますが、カメの場合は防御のためでなく、水中で泳ぎやすくするために作られたのではと推測しています。バランスが保ちにくい水中で体を水平に保って泳ぐため、あるいは体を重くして海底に長く沈むための進化だったのではないでしょうか」
だが、これでカメの進化についてすべての謎が解けたわけではなく、「肋骨が背中だけを覆うように進化したのかついてはまだ不明」なのだとか。平沢先生は、「今後は、その発生を司るメカニズムを突き止めたい」と、意欲を述べている。
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