我々が憧れるミュージシャンたちにも、必ず“ファン時代”があったのは当たり前のこと。昨年末に急逝した大瀧詠一は、中学2年生の時にエルヴィス・プレスリーと出会い、わずか1年半で当時発売されていたエルヴィスのレコードを全て集めてしまいましたが、そんなにハマったエルヴィスをも吹き飛ばす大事件が、大瀧少年に訪れました。
「高校1年生の時、それまで集めたコレクションをみんな手放してしまうほどのグループが現れました。ビートルズです。このころはポップスもちょうどLP時代に入っていった時でもあり、LPを買うにはこれまで以上にお金がかかる。そこでシングル盤を処分して、LPのお金にあてたわけです」(『サウンド・レコパル』81年6月号)
大瀧が高校1年生だった1964年は、ビートルズがアメリカに上陸し、世界中に旋風が巻き起こっていた時期で、このとき大瀧が耳にしたのは『抱きしめたい』。エルヴィスに代わる新たなスターの登場により、多くの若者がエルヴィスからビートルズへと乗り換えましたが、大瀧はビートルズのレコードを収集しつつ、エルヴィス好きの友人に“エルヴィス収集”を続けてもらい、2大スターの作品が聴ける環境を確保したそうです。
これだけ大瀧が心酔したビートルズについて、大瀧と数々の楽曲を生み出した伊藤銀次は、こんなエピソードをラジオで語っています。
「なんかお前ビートルズに詳しいって話を聞いたぞ。じゃあビートルズが契約したアメリカのレーベル全部言えるか? そんなことも言えずになにがビートルズに詳しいだよ」(『伊藤銀次のPOP FILE RETURNS』第1回より)
大瀧は、野球、落語、映画などへの造詣の深さで知られましたが、「好きなら絶対コンプリート」の“大瀧イズム”は、学生時代から貫かれていたようです。(文中敬称略)
◆ケトル VOL.17(2014年2月15日発売)
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