シャーロック・ホームズの鹿撃ち帽 小説に一度も登場せず

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コントなどで探偵を演じる場合、“探偵っぽい雰囲気”を作り上げるマストアイテムが「鹿撃ち帽」。ごぞんじシャーロック・ホームズが挿絵で必ずといっていいほどかぶっている鹿撃ち帽は、「シャーロック・ホームズと言えば…」というひとつのアイコンになっていて、「シャーロックハット」と呼ばれたりもします。

しかしこの鹿撃ち帽は、実は小説には一度も出てきません。登場するのは挿絵のみ。なので、「シャーロック・ホームズと言えば鹿撃ち帽」というのは、挿絵が一人歩きして生まれたイメージなのです。

その絵を書いたのは、シドニー・バジェット。1891年の『ボスコム渓谷の惨劇』での挿絵が最初と言われています。なぜシャーロック・ホームズに鹿撃ち帽をかぶせたかは諸説ありますが、「シドニーが気に入っていたから」というのが今のところ有力な説。ですから、シドニーの想像力がなければ、鹿撃ち帽のシャーロック・ホームズは生まれなかったともいえます。

そもそもシドニーに挿絵を依頼したというのが、偶然というか、手違いだったそうなのです。本来は弟のウォルター・バジェットに依頼するつもりが、なぜかシドニーに依頼。そんな偶然で彼が描くことになったのです。ちなみにもうひとつのアイコンである「インバネスコート」も小説のなかには出てきません。これもシドニーが挿絵で着せたもの。当時の挿絵の影響力は絶大だったようです。

◆ケトル VOL.29(2016年2月12日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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