カニをきれいに食べる方法を科学的に追究 「伝説の剣」理論とは

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冬のごちそうの代表格といえば「カニ」。けれども、「カニは好きだけど、きれいに食べるのは難しい……」と思っている人は少なくないでしょう。きれいに食べるための道具も売られていますが、外食で持ち歩くわけにもいきませんし、できれば道具なしで食べたいところ。日常のさまざまな疑問にゆるーく挑む科学実験エンターテインメント番組『すイエんサー』(Eテレ)では、2015年12月22日の放送回でこの難題に取り組みました。

まずはカニの脚の両端に力を加えるだけでは、切れ目も入っていない殻を折るのは至難の業であることを確認。そこで視聴者に代わって疑問を追究する「すイエんサーガールズ」(略して「すいガール」)にヒントを与えるのが、ものに力が加わるメカニズムについて詳しい千葉大学大学院工学研究科の佐藤建吉准教授です。こうしてすいガールが課題に行き詰まるたび、番組では各界の専門家が登場して、科学的なアドバイスをしてくれます。

佐藤准教授によると、きれいに何かを折るためには、両端を持って力を加えるだけではダメ。親指も使って折りたいポイントに力を集中させることで、きれい折れるとのこと。これはつまり、物理で習う「支点・力点・作用点」の関係を表しています。とはいえ、そうやって折るだけではカニの身が殻の中に残ってしまいます。

すると今度は、カニの生態に詳しい神奈川県立生命の星・地球博物館の佐藤武宏さんが登場。しかし、なぜか渡されたのはカニではなく、鞘に刺さったまま抜けない「伝説の剣」。ノコギリで鞘を切り、中身の剣を抜き出してみると、握る部分には「脚」、反対側には「胴」と書かれています。これはいったい……。

カニを食べるときに、白いスジがくっついてくることがあります。実は、このスジの部分は「腱(けん)」といい、それを引っ張ることによってカニは脚の曲げ伸ばしをしています。しかもこの部分は、脚の先側の関節とつながっていて、胴体側の関節とはつながっていません。そのため脚の側を握って引き抜けば、白いスジと一緒にカニの身がきれいに付いてくるのです。

反対に胴から引き抜いてしまうと、スジと一緒に身が殻の中に残ってしまいます。「伝説の剣」のたとえは、そうした理屈を知識としてだけでなく、実際に体験して理解してもらうための工夫なのです。

一見すると、どうでもいいような疑問を入り口に、視聴者が出演者と一緒に解決方法を考え、最期には科学的に裏付けされた知識を身につけることができる。だから番組に登場する専門家のみなさんも、すいガールにヒントを与えるだけで、試行錯誤しているうちは手助けしたり、いきなり答えから教えたりするようなことはしません。その甲斐あって、彼女たちは毎回、自分たちの力だけで答えにちゃんとたどり着くのです。

解き方について頭を悩ませるよりも、まず手を動かしてやってみる──新しい発見はそこから生まれるのだと教えてくれる番組です。

『すイエんサー』
放送開始:2009年3月31日~放送中
放送時間:火曜19:25~19:50

◆ケトル VOL.34(2016年12月14日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。