真造圭伍原作のマンガ『森山中教習所』が、昨年映画化された。原作は、行間を読むようなところが多い作品だが、映画化に際し、監督の豊島圭介はこれをどう読み解いたのか? 現在発売中の『クイック・ジャパン』vol.129で、豊島はこう語っている。
「原作のマンガを読むと、なんとでも解釈できるというか、答えがあまり書いていない感じがして。『なぜ轟木は清高のことをあんなに気にしているのか?』とか。だからこそ登場人物に具体的な感情を注入して映像化するときは、意味を明確にしていく作業を一生懸命やりました」
野村周平が自由な大学生・清高を、賀来賢人がヤクザ組員の轟木を演じたこの作品。原作から大きく離れないというのは映画化の際の鉄則だが、やはり時には原作にないシーンも盛り込まざるを得なかったようだ。
「教習所を運営する一家と食事をするとき、清高はひとり離れて座るシーンがあって、みんなに見られていることに気づいた清高はニコッと笑って、変な顔をして食事を続けるんです。それは原作にはないんですが、『野村がやるとそうなるんだ』と思って。なにかかわいく見えるし、その場にすぐなじんで座れるほど厚かましくもない。照れもあるんだろうけど、距離感を持ちつつ、目が合ったら笑っちゃうところが、映画版の清高らしさなのかと思います」
同作は、ふたりの青年を軸にし、自然に囲まれた教習所を舞台に、ユーモラスだが胸をかきむしるような切ないストーリーが展開する物語だ。この作品を映像化することで、どんな友情が浮かび上がってきたのだろうか?
「僕にも『彼がいてくれたから、乗り切れた』という体験が何回かあって、その感じはやりたかった。ただこのふたりの関係って本当に友情だったのか、正直わからない。たぶん、徹夜した明け方に『わかった!』と悟りを開いたように感じても、後で結局はわかっていないことに気付く感覚に似ていて。
それを繰り返していくのが、人生の真実なのかな。だからふたりが『今、なにかを共有した』と思ったとしても、それはうたかたように消えていく。そういう夏の青春みたいなことはやれたかと思います」
『森山中教習所』は1月18日にDVDが発売されている。
◆『クイック・ジャパン』vol.129(2016年12月21日発売/太田出版)
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・『クイック・ジャパン』vol.129
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