名前というのは、その人にとって最も大切なもの。しかし、世の中には同姓同名の人が多数存在します。プロ野球の西武ライオンズには「本田圭佑」がいますし、「田村亮」といえば、若者が思い浮かべるのはお笑い芸人でしょうが、年配の方にとっては“田村正和の弟の俳優さん”。かつて日本ハムファイターズには、1チームに2人「田中幸雄」がいたこともありました。もし自分の名前が有名人と同じだった場合、それでも自分の名前を商標登録することはできるのでしょうか?
人の名前を商標登録しようとする場合、いくつかの注意点があります。まず、「他人の氏名」またはこれを含む商標は、その他人の承諾を受けない限り登録できません(第4条1項8号)。また、「芸名」やグループ名も著名なものは同様です(同号)。
では、自分の氏名や架空の氏名なら問題ないかというと、同姓同名の他人が実在する可能性があります。その場合には他人の氏名でもあることになりますので、やはりその他人の承諾を得なければ登録できません。
特許庁の実務では、「NTT の電話帳やインターネットのサイト等で、電話番号と住所が明確な同姓同名の他人が3人以上いないこと」を基準に判断しているようです。この審査により、同姓同名の他人がいなければ、商標登録が認められる可能性があります。
また、氏のみで登録しようとする場合、「ありふれた氏又は名称のみを表示する商標」(第3条1項4号)は商標としての識別力がありませんので、原則として登録できません。「ありふれた氏または名称」とは、電話帳において同種のものが多数存在する場合と取り扱われています。
ところで、スズキやホンダといったありふれた氏が自動車等の商標として登録されるのは、盛大な使用実績により識別力を獲得したと認められるためです(第3条2項)。うなぎ料理の提供について江戸時代にまで遡って使用実績を立証して商標登録が認められた「尾花」などもこの例です。
◆『わかって使える商標法』(虎ノ門総合法律事務所・著/太田出版/3500円+税)より
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