新世代のゾンビを生んだ「バイオハザード」 過去作品との決定的な違い

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死者が蘇り、生きた人間たちを襲い、食い尽くしていく──そんな「ゾンビ」がブームとなっています。1968年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督の映画『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(『NOTLD』)』が大ヒットしてブームになり、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVにも登場して知名度をますます高めたゾンビですが、90年代に入るとブームは一段落。ゾンビ映画の公開本数も減っていきます。

このままゾンビは一時のブームで終わるのか……。そう思いきや、またも思いがけないところから、ゾンビ人気に火をつけるコンテンツが登場します。それが1996 年にプレイステーション用ゲームとして発売された『バイオハザード』でした。

アメリカ中西部の地方都市ラクーンシティを舞台に、市警の特殊作戦部隊の隊員たちとゾンビの死闘を描いた同作は、日本のみならず世界中で大ヒットしました。仲間の隊員に覆いかぶさっていた人物がこちらを振り返ると、そこにいたのは人肉をあさるゾンビだった……という冒頭のシーンは、今も世界中のプレイヤーからトラウマとして記憶に刻まれています。

『バイオハザード』はゾンビ映画からの引用も多く見て取れます。『NOTLD』や『ゾンビ』で描かれた「限定された空間で起こる恐怖体験」というロメロ作品のフォーマットを踏襲し、全編がほぼ一軒の洋館で進行します。実際、続編の『バイオハザード2』では、そのCM制作をロメロ自身が担当しているのです。つまり、70年代から80年代にかけてのゾンビブームに触れた世代が、そのオマージュをたっぷり盛り込んで作り上げたゲームだったわけです。

とはいえ、『バイオハザード』のゾンビはすべてにおいて過去作品を踏襲しているわけではありません。もっとも特徴的なのが、ゾンビ発生の原因を「大企業の科学実験によるもの」と特定しているところ。これまでは「ゾンビ発生の理由は不明」であることが一般的でしたが、『バイオハザード』ではアンブレラという国際企業による経済活動の暴走が、ゾンビパニックを引き起こしたとはっきり描かれています。

企業の国際化が進み、国家の影響力が相対的に小さくなっていくなかで、エンターテインメントの悪者がグローバル企業になる。そういった設定も、同時代の人々にとってリアルに感じられるものでした。ゲームにおけるゾンビも、やはり社会を映す鑑として人気を博していったのです。

◆ケトル VOL.38(2017年8月16日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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