実はかなりのダメ人間? 『北の国から』の五郎のアダ名「一発のゴロ」の由来

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欠点があるから人間は光る──脚本家の倉本聰さんは、自身のキャラクター造形の秘訣をそう語っています。決して完璧ではないけれど、人間味にあふれた魅力的な人物たちが多数登場する『北の国から』で言えば、主人公の黒板五郎(田中邦衛)がまさにそれ。ドラマを観たことがない人は、実直な頑固オヤジのようなイメージを持っているかもしれませんが、その先入観は間違いで、倉本さんはむしろ「欠陥だらけの人間」として五郎を作り上げました。

主要人物の生年月日は資料によって微妙に設定が異なりますが、富良野にあった「北の国から記念館」に展示された「住民票」の記録によると、五郎の生年月日は1935年10月10日生まれで、出身は北海道富良野市字東麓郷。特技として「剣道初段」というデータも記されています。

そんな五郎ですが、まず女性にだらしない。高校時代には何人もの女性を“一発”で妊娠させたことから「一発のゴロ」という異名をとります。仕事も長続きせず、家業の農業が嫌で富良野を飛び出したかと思えば、勤めては辞めることの繰り返し。結婚して純(吉岡秀隆)と螢(中嶋朋子)が生まれたあとも、勤め先の自動車修理工場を交通事故でクビになり、ガソリンスタンドでこき使われる日々に甘んじていました。そしてついには、妻の令子(いしだあゆみ)に不倫までされてしまいます。

さすがの五郎も、「オレはこれでいいのか?」と思ったはず。子供たちの父親として、何ができるか真剣に考えました。そこで導き出した答えが、純と螢を連れて富良野に帰り、自給自足の暮らしをすること。お金もない、仕事で成功したわけでもない、妻に不倫までされてしまった。そんな自分が伝えられるのは、人間が本来持っている「生きる力」ではないか──。そう五郎は考え、自身が生まれ育った富良野の奥地へと移住するのです。

「お金を使わずになんとかして初めて、男の仕事って言うンじゃないですか?」 初めての田舎暮らしに戸惑う純に、五郎はこう言い放ちました。そして実際に五郎は、お金に頼らず自力で廃屋を直し、沢から水を引き、風力発電を作っていきます。そうして次第に、ぐうたらで、職も安定せず、女たらしだった五郎が、子供たちから尊敬される父親になっていくのです。

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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