天皇陛下が2019年4月で退位することになり、改めて天皇制に対する関心が高まっている。そもそも天皇や皇族は、どんな一生を送るのか? 『図解でわかる 14歳からの天皇と皇室入門』(太田出版/著者=大角修、インフォビジュアル研究所/監修=山折哲雄)では、このように説明している。
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【懐妊から出産、成人まで】
皇太子妃や宮家の妃殿下がご懐妊されると、宮内庁病院で検査を受けられて、宮内庁が国民に発表します。懐妊5か月目の戌の日には安産を願って「御着帯(おんちゃくたい)の儀」が行われます。出産は宮内庁病院で行われてきましたが、秋篠宮紀子妃が2006年(平成18)9月6日に悠仁親王を出産されたのは恩賜財団母子愛育会の愛育病院でした。
誕生された赤ちゃんは「新宮」と呼ばれます。誕生当日に天皇から守り刀をいただく「賜剣(しけん)の儀」が行われ、枕元に守り刀が置かれます。お七夜には名前がつけられる「命名の儀」が行われます。親王は「仁(ひと)」、内親王は「子」とつけ、漢字2字の名がならわしです。
また、皇太子の新宮には称号が与えられます。愛子内親王の敬宮が称号です。また、皇族にはお一人ずつ「お印」が決められます。お印は持ち物などに付けられるシンボルです。たとえば、愛子内親王はゴヨウツツジ、悠仁親王は高野槇のお印です。
昔の皇室では新宮は乳母にあずけて育てられましたが、現在は誕生時からご両親のもとで育てられます。そうなったのは現在の皇太子の浩宮徳仁親王が1960年(昭和35)2月23日に誕生されてからです。生後50日くらいには宮中三殿へのお参り、120日目くらいに「箸初めの儀」などがつづき満18歳になると成年式を迎えます。
【皇族の教育】
皇族は学習院で学ばれます。もとは江戸時代の1847年(弘化4)に京都につくられた皇族のための学校で、現在は学習院大学・学習院女子大学と付属の初等科・中等科・高等科があり、一般の子どもも入学できます。今は他の大学に進学される皇族もおられます。
結婚皇族の結婚は皇族会議で審議される重大なことです。相手が決まると、まず一般の結納にあたる「納采の儀」が行われ、次に「告期の儀」が行われて、式の日取りが決まります。親王の結婚は国家の儀式として皇居で営まれ、その後、御成婚のパレードが行われます。
【譲位と即位】
歴史的には生前に退位して次の天皇に譲位し、上皇になる例がよくありました。しかし、今の皇室典範には第4条「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とあるだけで、生前の退位が想定されていません。しかし、現在の天皇がご高齢のために退位を希望するお気持ちを発表されたことを受けて皇室典範の特例法が国会で議決され、2019年4月30日に退位、翌日、現在の皇太子が即位される予定です。
新天皇の即位には3つの段階があります。まず、践祚(せんそ。皇位をうけつぐこと)の儀式です。三種の神器と御璽(ぎょじ)・国璽(こくじ)をうけつぐ「剣爾渡御(けんじとぎょ)の儀」が行われ、即位式は日をおいて行われます。さらに11月に天皇一代に一度の特別の新嘗祭(にいなめさい)である大嘗祭(だいじょうさい)が行われます。大嘗祭の挙行によって即位が完了するものとされています。
【天皇と皇族の葬儀】
天皇・皇后・皇太后が崩御(ほうぎょ。死亡)されると、国家の儀式として「大喪(たいそう)」が行われます。それは一般の葬儀にあたる儀式で、このとき「○○天皇」という天皇号がつけられます。亡くなってからおくる名なので追号といいます。「昭和天皇」というのも追号で、生前は「裕仁」という名が使われていました。ご遺体は東京都八王子市にある武蔵陵墓地に埋葬されます。皇族方は東京都文京区にある豊島岡墓地に遺骨が埋葬されます。
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聞き慣れない単語のオンパレードだが、退位の日はもう間近に迫っている。天皇制の歴史から政治的、文化的意味について学べる『図解でわかる 14歳からの天皇と皇室入門』(太田出版/著者=大角修、インフォビジュアル研究所/監修=山折哲雄)は、2018年4月11日発売。1200円+税。
【関連リンク】
・図解でわかる 14歳からの天皇と皇室入門-太田出版
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