「CDが売れない」と言われるようになったのはかなり前のことですが、スマートフォンの登場はCDが売れない時代をいよいよ決定的なものにしました。というのも、iPod にとってパソコンは不可欠なものであり、CDを取り込み、データを抽出するという流れが存在していたからです。
もちろん、音楽配信のiTunesMusic Store は日本でも始まっていましたが、特に邦楽に関してはラインナップが十分ではなく、あまり普及していませんでした。そうなると、iPod で音楽を持ち運ぼうとする人は、CDを買うかレンタルするかしなければならなかったのです。
しかし2007年のiPhone 発売からスマホの時代が始まると、音楽の再生機でもあるスマホ上でインターネットから直接音楽を購入できるようになりました。iPodと電話とパソコンを一体化したiPhoneは「音楽をCDからリップする(=読み込む)」という作業をなくしてしまいました。
あるいはYouTube から無料でミュージシャンのPVを観ることだってできます。その結果、CDプレーヤーを買わなくなっていた若者たちが、パソコンすら買わなくなるということが起こりました。これはCDの再生機そのものが自宅から消えていったということを意味しています。
例えば、それまでインディーズのミュージシャンたちにとって、音楽を聴いてもらおうと思ったら、自分たちでCDを焼いて配るのが当たり前でした。しかし、スマホの普及以降は音源を動画サイトで公開するのが当たり前になっていきます。そうしなければ、CD再生機を持ってない若者に曲を聴いてもらうことができないからです。
さらに、2008年には光学ドライブ非搭載のノートパソコンMacBook Air も発表され、「パソコンはあってもCD再生機は持ってない」という人まで現れるようになりました。音楽業界がなんとかリスナーにCDを売ろうと思っても、相手はそれを聴く手段そのものがないという時代が訪れたのです。
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