創作に携わる者は、普段どんなこと、どんなものからインスピレーションを得ているのか? そんな疑問に答えるべく、作家の西加奈子と、芸人で作家の又吉直樹が上野の東京国立博物館・東洋館を訪れた様子が、『クイック・ジャパン』vol.139で紹介されている。多くの読者を魅了する作家達は、芸術作品をどう楽しんだのか? 2人はこう語っている。
又吉 「僕も西さんも昔っから共通して、表情が好きなんですよね。顔ってほんま、言葉で説明できないむちゃくちゃ微妙なニュアンスを伝えられるから、面白いというか、見てまうというか。今回も、仏像とかの顔を見ながらいろんな想像をしてました。3体の仏像が並んでるやつとか、真ん中のはキリッとしてるんやけど、両端の仏像は『この人を守るんだ』であったり、『この人に仕えるんだ』って表情に見えるんです」
西 「めっちゃ昔の人が作ったやつなのに、わかる気がするのが面白いよね。私は今回の展示を見て、国によって仏像の顔がぜんぜん違うことにびっくりしました。中国とか日本の仏像って、平板にも見える微妙な表情やからこそ、意味がどうとでも取れるのかもな、とか。たとえばみんなで飲みに行ってて、熱心になにか喋ってる人の顔も面白いけど、『ふんふんふん』って話を聞いてるようで聞いてない人の顔もめっちゃ面白い」
文章で勝負している人間でありながら(だからこそ?)、言葉で説明できない微妙なニュアンスに魅力を感じた様子の2人。又吉は昨年、森アーツセンターギャラリーで開催された『エルミタージュ展』で音声ガイドを務めたこともあるが、アートに苦手意識がある人は、どうやってアートを楽しんだら良いのか? 2人はこうアドバイスしている。
又吉 「知識を頭に入れて勉強していくのもいいんですけど、わざわざまずく食わんでもいいのになぁとは思いますけどね。その作品が自分の中から引っ張り出してくれる、なにかしらの感覚があるはずで、そこを素直に楽しんだらええんかなあって思います」
西 「これは美術館的にはあかんのかもしれんけど、順路は守らなくてもいいんちゃうかな? 観たいと思ったものを観たい順番で、自分の好きなように観ればいい。そう思うだけでも、脳みそが自由になる気がします。あとは、タイトル当て。作品を見て、タイトルを当てるのってけっこう面白いですよ。自分で勝手なタイトルをつけたりして」
又吉は「自由に遊んでみてほしいです」と語っているが、それは恐らく文学でも同じ。なお、『クイック・ジャパン』vol.139では、展示を見てインスピレーションを受けた2人が制作したオリジナル作品も紹介されている。
◆『クイック・ジャパン』vol.139(2018年8月21日発売/太田出版)
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