世界経済が逼塞するなか、日本のみならず世界が熱い視線を送るのがオイルマネー。中東の産油国は、今でこそ潤沢な国有資産を誇りますが、石油の利権は当初、欧米資本に独占されていました。中東の国々は、どうやって欧米各国と対等に渡り合えるようになったのでしょうか? 『図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史』(太田出版/インフォビジュアル研究所、大角修・著)では、このように説明しています。
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1859年のペンシルベニアのタイタスビルの荒野で、エドウィン・ドレークが油田を掘り当てました。これまで地上に滲み出ていたロック・オイルを、岩塩採掘の技術で油層までボーリングし経済的に大量に噴出させたのです。このドレークの油田を、巨大な石油産業に育てたのは、ジョン・D・ロックフェラーでした。
彼は20歳で石油の卸売業を始めます。乱立のため過当競争に陥る石油業界を、石油精製から輸送・販売までを垂直統合し、1870年にスタンダード石油を設立。その12年後にはアメリカの石油の90%近くを扱う産業資本家へと成長します。
1873年、ロシアのバクーには、スウェーデンからノーベル兄弟が参入します。弟のアルフレッド・ノーベルが、後にノーベル賞を創設します。このバクー油田事業に、ヨーロッパ最大の金融資本ロスチャイルドも投資し、これをきっかけにロシア・ヨーロッパの石油事業を掌握します。
石油の産業化は、蒸気機関による産業革命を、新たなスピードで驀進させる第二次産業革命に導きました。石油は、石油化学工業が生み出す産業素材によって、最大の基幹産業へと変貌し、世界の主要な産業資本家の活躍の場となります。
1908年に中東で原油が採掘された時は、利権をめぐり、イギリス、オランダ、フランス、アメリカがしのぎを削りました。1950 年代、世界の石油は石油メジャー・セブンシスターズと称されるアメリカ、イギリス、オランダ系の7社のカルテルに支配されました。
1960年に、このような欧米資本の独占に対して中東の産油国が立ち上がります。OPECの誕生です。石油メジャーに対して共同で石油価格を交渉し、中東戦争ではイスラエル支援国への禁輸など、石油を武器に欧米諸国と戦いました。そして1970年代に産油国は次々と石油施設を国有化します。1980年代を境に、膨大なオイルマネーが産油国に流れこみ、世界のイスラム社会の経済力を底上げし、特に湾岸産油国の驚異の経済成長を実現しました。
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現在は“この世の春”を謳歌する中東の産油国ですが、原油の枯渇の可能性、クリーンエネルギーへの転換など、課題は山積しています。ただ、石油資源をほぼ100%輸入に頼っている日本にとっては、仲良くしなければいけない相手。これからも中東情勢からは目が離せない状況は続くでしょう。
同書ではこの他、民族、気候、交通、文字、貿易、宗教、帝国、通信、武器、法律、資源、農業、工業、科学など、様々な角度から世界の繋がりを図解でわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史』(太田出版/インフォビジュアル研究所、大角修・著)は2019年1月17日発売。価格は1200円+税。
【関連リンク】
・図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史-太田出版
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