岡藤真依×宋美玄 「性」で悩んだ学生は誰に相談すれば良い?

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「Ohta Web Comic」で連載された岡藤真依のコミック『少女のスカートはよくゆれる』の単行本が4月12日に発売されるのを記念し、特設サイトがオープン。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』の著者の宋美玄先生と岡藤の対談が実現した。

『少女のスカートはよくゆれる』は、幼児期のトラウマを抱えてなかなかセックスに踏み込めない女の子、脳性麻痺だけど普通に恋愛をしたい女の子、家族関係がうまくいかず生きづらさを感じて恋人と街をさまよう女の子、女性の親友への想いに戸惑う女の子……、恋をして、キスをして、セックスをするという、あたりまえのようでむずかしい少女たちの「性」を、岡藤が丁寧紡いだ作品だ。

宋氏は大阪大学医学部出身で、子育てと産婦人科医を両立しながら、セックス、女性の性、妊娠などについて、女性の立場からの積極的な啓蒙活動を実践。2010年に発売された『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』は、数十万部を売り上げる大ベストセラーとなった。対談では、ともに神戸出身で、しかも女子校出身同士という2人が、性教育の難しさについてこう語っている。

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宋美玄(以下、宋): 最近、学生に性教育をしようとすると男、女という前提でやっていたら進まないので、まずはLGBTから学ぶようです。でも、実際LGBTの話からやると大半の子が寝てしまうんです。当事者でないから遠い世界の話だと思うようです。では興味をもつようにと、ネタっぽく話すのも今度は弊害になってしまうのでいけない。ニュートラルに、コレクティブに面白く話すのは難しいですよね。デリケートな問題だし、思春期特有のちょっとした同性愛的なところもあるし、一方で本当のLGBTもある。

岡藤真依(以下、岡藤):思春期特有のちょっとした同性愛はたしかにありますね。友だちへの独占欲だったのかと思いますが、女子校だと心を寄せる相手が女子しかいないから、そうなってしまったり。そのときの一瞬の「男子の代替」としてその人を好きなのか、それとも本当に好きなのか。わたしはそこまでセンシティブにならなかったのですが、悩んだ子もいるみたいで。学校で身体の仕組みは教えてくれるけど、そういう心の問題を教えてもらいたかったな。

宋:でも、実際、それを教えられる先生が学校にいるのかというと、いないんです。

岡藤:では、どうやって学んでいけばいいのでしょう。

宋:一番近いのは外部講師を学校が招くということかな。でもそういう性教育も学校側から「セックスについては喋らないでね」とストップがかかる学校もあります。セックスは人によっては愛情表現だけど、別に愛情表現とは限らないじゃないですか。例えば別にセックスがしたい人同士がしたらいけないのか、二人がしたければすればいいし、生殖のためだけにセックスする夫婦もいる。セックスというのは、愛し合った二人だけしかやってはいけませんと教えたほうがいいのか、というのもあるわけです。

岡藤:たしかに。

宋:学校がそういう価値観に注文つけてくるとこもあるんです。結局、セックスというのは最終的には人に迷惑がかからなければタブーはないわけです。そういう産業もあるわけだし、産業そのものを否定する教育というのもおかしい。学校側や保護者側が求める教育と外部講師の選び方には、様々な側面からの価値観が関わってくる。「性教育」と称して、出産の素晴らしさの授業だけやって終わりという学校もあるので。中高生に教えるための、性教育のエキスパートの養成もやっているんです。でも学校が呼んでくれないと成立しない。

岡藤:『少女のスカートはよくゆれる』の第1、2話では、トラウマを抱えた子が保健室の先生と話をするシーンがあるのですが、実際に悩みを抱えた子は誰に相談するのがよいのでしょう。

宋:保健室の先生をやっている人に聞くと、そういう人たちに来てもらえると嬉しいと聞きます。そこが保健室のいいところですね。でも、保健室の先生も、あまりにも深刻なことは抱えきれない。でも家庭、学校、友達、それ以外でも、どこかで誰かが助けてくれないといけないのだけど。そういう意味で、日本は性教育のセーフティーネットがボロボロ…。例えばスウェーデンだと、性教育小屋のような施設やセンターがあります。そこで学校側から生徒を派遣してみんな性教育を習う。そこに行けばピルもくれるし性病も調べられる。

岡藤:日本にはないですね。

宋:そう。イギリスにもそういうセンターがあります。ちなみにわたしの母校では「ピルは危ない薬だから飲んではいけません」と習いました。知り合いの娘さんも学校でそういう教育をされたというので先生に抗議したけど、なんの返事もなかったそうです。

岡藤:わたしもピルは避妊薬としか習っていないです。生理を正しくする作用もあるんですよね、そういうのも全然教えてもらえなかった。大人になってから知りました。

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性に関してはしばしば、「時が来れば自然と分かる」といった乱暴な言説が囁かれがちだが、対談で宋先生は、「本能ではペニスを膣に入れるという行為にはたどり着かない」と断言。中高生に「性」を正しくつたえることの必要性を説いている。少女たちの揺れ動く性を描く『少女のスカートはよくゆれる』は、2019年4月12日発売。1500円+税。また、刊行記念トークイベントが4月、本屋Title、B&Bほかで予定されている。詳しくは特設サイトをチェック。

【関連リンク】
岡藤真依『少女のスカートはよくゆれる』特設サイト
「性」を描くということ 『少女のスカートはよくゆれる』(太田出版)刊行記念 岡藤真依×安永知澄 トーク-本屋Title

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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