7月2日、アダルトメディア研究家の安田理央氏が『日本エロ本全史』を上梓した。同書は1946年から2018年まで、日本のアダルト誌の歴史を創刊号でたどったもの。日本最大級のアダルト誌コレクターである安田氏が、自身のアダルト誌創刊号コレクションから、エポックメイキングな雑誌100冊をピックアップし、オールカラーで紹介している。
今年1月、大手コンビニエンスストアが8月いっぱいで成人雑誌の取り扱いを止めることを相次いで発表し、まもなく“エロ本”がコンビニから消える。そこで、風前の灯となったエロ本への感謝と惜別の意を込めて、同書から1977年創刊の『ウイークエンド・スーパー』(セルフ出版/日正堂)を紹介しよう。
こちらは、後に『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』など、伝説的な大ヒット雑誌を世に送り出した天才編集者・末井昭が手掛けた雑誌。同誌がスタートした70年代は、日活ロマンポルノが大ブームとなる一方、雑誌界では『日本版PLAYBOY』『薔薇族』『SMスナイパー』など、幅広いジャンルのアダルト誌が部数を重ね、ビニ本ブームも到来するなど、アダルト誌が非常に元気な時代だった。
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『ニューセルフ』に続いて末井昭が手がけたサブカルエロ本。誌名はゴダールの「ウイークエンド」からの引用であり、「感じる映画雑誌」のキャッチフレーズのように映画雑誌ということになっていたが、映画よりもエロ、アイドル、写真、音楽、パロディ、その他わけのわからないものがごったになったサブカルチャー誌としかいえない誌面で伝説となる。
創刊号は水着グラビアとヌードがやたらと多く、芸能寄りのエロ本という印象だが、女子高生のロックバンド「ガールズ」とフォークシンガー友川かずきの全く噛み合わない対談が不穏で面白い。
しかし号が進むにつれ誌面は混沌化していく。上杉清文、南伸坊、平岡正明、赤瀬川原平、高平哲郎、朝倉喬司、鈴木いづみ、北川れい子、上野昂志、糸井重里、呉智英、巻上公一、山崎春美、島武実という執筆陣、荒木経惟、倉田精二、小暮徹、滝本淳助という撮影陣が好き勝手に暴れまわり、末井ワールドとも呼ぶべき独自の世界を築いていった。
最も有名なのは、西瓜愛をテーマにした特集「愛情西瓜読本」だろう。世界でも有名な西瓜割り芸人、西瓜とSMプレイなど徹底してシュールなパロディが展開されている。ちなみにヒカシューのセカンドアルバム「夏」は、この特集がコンセプトとなっている。
1981年に休刊するが、最終号は『ヘヴィスキャンダル』9月号を乗っ取る形で刊行。その後『ヘッドロック』に誌名変更される。
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当時はエロ雑誌の誌面で自由で過激な実験が繰り返され、そこから多くの才能が羽ばたいた。安田が「ある意味で、幸せな時代だった」(『日本エロ全史』より)と呟いたのも納得の一冊だと言えよう。
『日本エロ本全史』(安田理央・著/太田出版)は2019年7月2日発売。3700円+税。
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・日本エロ本全史-太田出版
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