絶好調のアメコミ映画 壮大な実験があったから今のブームが生まれた

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映画界では今、マーベル作品の快進撃が止まりません。4月に公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』の興行収入は、『アバター』を抜いて歴代1位となり、7月(日本では6月)に公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も現在、全世界で大ヒット中。アメコミ映画は空前のブームを迎えています。

日本では1994年にアニメ版『X-MEN』の放送がスタートし、翻訳コミックスや対戦格闘ゲームも登場して、一斉にメディアミックスを展開。一気に広がりを見せますが、ほどなくして人気が衰退します。1997年公開の『スポーン』が世界的規模で大コケし、マーベルは倒産の危機を迎えるほど苦しい状況に陥りましたが、それを盛り返したのが2000年公開の実写映画『X-MEN』でした。

90年代に成功したアメコミ映画はほとんど無く、当時の認識は「アメコミ=ギャンブル」。しかし、『X-MEN』はアメリカだけでなく、日本でも初週1位を獲得。大成功を収めたのです。この世界的ヒットは暗いニュースが続いていたアメコミ業界における一筋の光となりました。その勢いに乗って2年後に公開された『スパイダーマン』が全世界で8億ドル、日本でも75億円の興行収入を記録すると、アメコミへの注目度が一気に高まったのです。

そして、2003年に公開された『X-MEN2』が、アメコミ映画のひとつのターニングポイントになります。これ以降は続々とマーベル作品が映画化され、アメコミの世界は90年代では考えられないような活況を迎えました。そして2008年、『アイアンマン』の登場と共に空前の大ブームへとつながるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が幕を開けたのです。コミックスの翻訳やアメコミ関連の記事執筆などを手がけるアメコミ・エディターの柳亨英さんは、『ケトルVOL.49』でこう語っています。

「現在のアメコミ映画のブームを築き上げたのは、やはり『X-MEN』という壮大な実験があったからだと思います。武田信玄ではありませんが、城は土台がきっちりしていないといけません。『X-MEN』と『スパイダーマン』という土台の成功があったから、マーベルは実写映画に本格的に舵を切ることができた。まさに今のアメコミ映画の成功は『X-MEN』なしには語れないのです」

『X-MEN』の映画シリーズは、6月に公開された『X-MEN:ダーク・フェニックス』で終焉を迎えましたが、映画界における偉大な功績は、今後も語り継がれることになりそうです。

◆ケトルVOL.49(2019年6月15日発売)

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ケトル VOL.49-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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