スティーヴン・キングとジョージ・ロメロ 「帝王」と「巨匠」の共通点

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世界的ベストセラー作家・スティーヴン・キングの『ペット・セメタリー』がおよそ30年ぶりにリメイクされ、現在絶賛公開中ですが、キングは自身の監督作(『地獄のデビルトラック』)を持つほどの映画好き。“ホラーの帝王”とも呼ばれるキングが深い親交を結んだのが、ホラー映画の巨匠、ジョージ・A・ロメロです。

〈僕の良きコラボ相手であり、古くからの友人でもあるジョージ・ロメロが亡くなった〉

2017年7月16日、ロメロ監督の訃報を受け、キングはこうツイートしました。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』などで知られるロメロは、ホラー映画の『クリープショー』『ダーク・ハーフ』でコンビ(キングのオリジナル脚本をロメロが監督)を組み、亡くなる直前までキング原作の『トム・ゴードンに恋した少女』の映画化も準備していました。まさに“良きコラボ相手”だった両者は、なぜそれほど惹かれ合っていたのでしょうか?

それは互いの作風に共通点があったことが大きいでしょう。ロメロもキングもクラシックなホラー映画やホラー漫画に影響を受けて育ち、1982年の『クリープショー』は20世紀半ばにブームだった“ホラーや犯罪コミックスの再現”を目指したオムニバス映画でした。

そして、作中の“恐怖”が世相を反映したものである点も似ています。キングとロメロが若き日を過ごした1960年代は従来の常識が通じなくなった時代。ベトナム戦争、公民権運動、ヒッピー文化の台頭、核の恐怖……。そんな混沌とした世界を、ロメロは人が人を喰うゾンビ映画(『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』)で表現し、キングはイジメられっ子の女子高生が街を焼き尽くす(『キャリー』)ことで表現しました。

自作の結末をキングが「虐げられた者の革命」と呼んでいるように、多数派の日常が異形の者に破壊される恐怖を両者は描きました。しかし、それは同時に「虐げられた者」にとっては胸がスッとする快感でもあります。その両義性が彼らの作品の特徴であり魅力となっているのです。

共に社会の価値観が大きく変わった時代にデビューし、それまで多くの人が信じていた常識が崩れていくことに対する恐怖を“ホラー”という題材で描き続けたキングとロメロ。まさに2人は盟友であり、「君のような人は、もう二度と現れないだろう」とキングは追悼のメッセージを締めくくっています。

◆ケトルVOL.52(2020年2月15日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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