陳暁夏代×富沢櫻子「姓を変える」という選択肢（中国美女漫談）

今、注目の国・中国。日本と中国の背景を持つ陳暁夏代（ちんしょう・なつよ）が、カルチャーシーンをリードする様々な職業の中国美女をゲストにお迎えし中国と日本を語り合う連載がワンテーママガジン「ケトル」にてスタート！　第6回の美女は、サシェ・キャンドルブランド「檸檬はソワレ」の富沢櫻子さんです。

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夏代：櫻子ちゃんとの初対面は19歳だっけ？　姓が“呉”だった記憶なんだけど……？

櫻子：そうなんですよ！　20歳の時に戸籍上も正式に呉から富沢に変えました。

夏代：結婚したわけじゃないよね!?　どうやって変えたの？

櫻子：両親ともに中国出身なんですが、姓を変えずに帰化したことで、通称も使えず、小さい頃から名前が原因で日中両国で嫌な経験をして。名前より姓の方が変えやすかったので、本気で法律調べて変えました。

夏代：それをコンプレックスに思う人は結構いるけど、本当に変えた人は初めて聞いたよ！

櫻子：ですよね。そもそも結婚や離婚以外で姓を変えるのはそんなに簡単じゃなくて。家庭裁判所にも何度も通い、結果、数年がかりでした……。

夏代：ビジネスネームを使い分ける人もいるけど、そんなに大変な思いをしてまで、変えようという決意はどこから？

櫻子：今思えばもうコンプレックスからの執念というか……大人になった今は、別に変えなくてもよかったんじゃないかと思うくらいフラットになってきたんですが、それはある意味、変えられた瞬間に肩の荷が降りたというか、気にならなくなった。

夏代：そのコンプレックスの原体験とかある？

櫻子：一番嫌だったのは、喧嘩とかするじゃないですか、子供同士の些細な。そういう時に私の悪口を言えばいいのに、私のバックグラウンドを含めた悪口を言われるんですよ。「これだから中国人は」とか「日本人らしくて嫌だな」とか。相手も無意識だと思うんですが、私はこれ、コミュニケーションをサボっていると思ってて。本質と向き合わないというか、“私”という個人を見てくれていないというか。

夏代：とてもいい表現。わかる。

櫻子：名前がどっちつかずだから、相手の都合の良いように言われる。どっちかにつけば、少なくとも悩みは減るだろう、と。それで姓を富沢に変えました。残留孤児だった祖母の日本名です。

夏代：じゃあ、一応、家系の姓は継いでるんだ。

櫻子：そうなりますかね（笑）。両親も、賛成していたわけじゃないけど私の勢いに負けた、という感じですね。同じような悩みを抱えている人にも、私ほどの強硬手段を採ることをお勧めしたいとは思わないです。ただ、こういう選択肢もあるよ、というのを知ってくれるとうれしいな。

夏代：悩んでいても参考にする相手がいなかったりするもんね。この連載も実はそういうコンセプトで、いろんな事例を届けられたらと思っているんだよね。悩んでいる人は、自分に似ている人を見て安心するから。1人じゃないんだって。ちなみに、今やっているキャンドル作品のブランドは、なぜ始めたの？

櫻子：22歳の時に父が倒れてしまい、私も仕事と介護の両立ができるように、予定していた就職を断念して、家業に就くことにしました。その時くらいから、新しいことを何か始めたいという一心で蝋を扱い始め、サシェ・キャンドルのブランド「檸檬はソワレ」を始めました。

夏代：導かれたようだね。

櫻子：何気ないスタートだったんですが、キャンドル作りって、同じ型にいろんな色の蝋を流し込むんですが、できたものは全部違って見えるんですよ。それが面白いのかもなって。自分と重なって。実はみんな違うんだよって。

夏代：それはさっき話していたコミュニケーションをサボらないで、っていう話と同じだね。

櫻子：そうなんです。何気ない作品作りも、実はそういう思想を反映してるんだなって思いました。

【プロフィール】

陳暁夏代／内モンゴル自治区出身、上海育ち。幼少期から日本と中国を行き来する。2011年より北京・上海・シンガポールにてイベントを運営。2017年DIGDOG llc.を立ち上げ、日中のエンタメ分野や若年層マーケティングを多く手がける。
www.chinshonatsuyo.com
Twitter：@chinshonatsuyo