俳優・本田礼生さんの初連載「本田礼生のこもりっぱなし」が待望の書籍化!
『CONTINUE』での連載全13回の加筆に加え、書き下ろし3回、未収録のアザーカットと新規撮りおろし写真など、これまでの連載の集大成となる豪華な一冊となっています。
刊行を記念して、OHTABOOKSTANDでは、本書の中から5つのエピソードの一部を抜粋し、特別に公開していきます。(全5回)
今回は、印象に残っている映画について語られた連載第11回の一部をお届けします。
──いままで観た中で強く印象に残っている映画を教えていただけますか?
本田 たくさんありますがまずは『ユージュアル・サスぺクツ』。この映画を観て僕の芝居感やエンタメ感が確立、って言ったら大袈裟ですけど、芯が1本できました。あと、裏切られるのもここまできれいに裏切られると気持ちがいいんだなって(笑)。
──爽快感がありますよね。
本田 いろんな解釈があると思うんですが、僕はもう全部どうでもいい2時間半だったっていう解釈。結局事実か事実じゃないかわからないじゃないですか。
──映像をそのまま信じてしまってました(笑)。
本田 ケビン・スペイシー演じるヴァーバル・キントが取り調べをされているときに、目に入ったものから話を構築していく。名前だけ変えてるとか、自分に都合の良いように作ったとかいろんな解釈はあると思うんですけど、そう考えている時点でまったく事実と関係のない話だったんだ! って気付くのもある種気持ちがいいじゃないですか。「あははは、マジかよ!」みたいなエンタメ(笑)。
──たしかにそうですね!
本田 僕が昔から映画が好きなのは人生だったりとか生きざまだったりとか、すごく太い芯があるものが観たいからなんですけど、真逆ですよね。芯も何もない。
──その辺にあるものから1本話ができてしまう。
本田 そう、それが衝撃でした。物語って最初と最後で話しがちじゃないですか。そうではなくて過程が大事なんだというのをすごく感じました。
──もう1本あげるとしたらどの作品ですか?
本田 『セッション』という生徒を自殺にまで追い込んでしまうようなすごくスパルタな音楽の先生・フレッチャーと、生徒でドラマーのニーマンの話です。
──音楽の指導でスパルタってあるんですね。
本田 ニーマンも負けじと頑張るんだけど、指導があまりにも酷すぎてフレッチャーを告発して、先生はクビになってしまう。数年後、ジャズバーで働いてた先生と再会したときに今度ジャズバンドするんだけどお前も出てみないかって誘われて。でも本番の日にニーマンにだけわざとまったく違う譜面を渡すんです。いきなり本番では弾けないから、一度はけようとするんですけど、舞台に戻ってアドリブで弾き始める。そしたら周りはプロのジャズ奏者だから合わせられるんですよ。
──先生はどうするんですか!?
本田 ニーマンに合わせて指揮をするところで終わるんです。とくに言葉も何もなく。だから『セッション』。ただそこに対する解釈や感じ方が人によって変わるんです。
──本田さんの解釈は?
本田 僕はすんごい音楽好きなふたり、っていう解釈でした。指導のトラウマとか、クビにされた復讐をしてやる、とかどれだけグチャグチャしててもすごくいい音楽を目の前にしたふたりは交わる瞬間がある。そこが気持ちいいし、かっこよかったんだけど、役者友達に聞くと「いや、もう辛くて見ていられなかった」って。
──真逆の反応ですね。
本田 本当にすごい辛い映画なんですよ、指導するシーンとか。でもいわゆる投げっぱなしの映画じゃなくてちゃんと最後まで作り切ったうえで人によって解釈がわかれるのが面白い! と思いました。挑戦的といえば挑戦的ですし、万人に好かれようともしてないのに挑戦的すぎないというか。なのに観てるほうが色々考えちゃうっていう。
──作ってる人たちがどう思ってたのかは気になりますね。
本田 僕が以前出演した『TRANS-トランス-』という舞台に少し近いものがありました。僕らはこうだって思ってやってるけれど、観てるお客さんによっては真逆の解釈になり得るかもなっていう舞台だったんです。『セッション』との出会いのほうが先だったので、解釈の違いってそういうことか、そういうエンタメもあるんだって身に染みて感じました。
──どちらも少し前の作品でした。
本田 これ偏見かもしれないですけど、めちゃめちゃ映画を作ってて楽しんでるんだろうなっていう時代があるような気がしてて。
──過去にその時代があったということですか?
本田 そうです。僕は圧倒的に洋画を観ているので洋画の印象になってしまうんですけれど、この時代は映画をクリエイティブするのをみんなが楽しんでるっていう。2000年とかもギリギリそうかも。あの辺の映画は特に好きです。映画を観る前に公開された年を確認したりしますもん。楽しんでるっていうのはハッピーだけじゃなくて熱。それを感じるのが好きだったりします。
──縛られてないみたいなことですか?
本田 そう! そういう感じです。……いまって、良くも悪くも昔のような映画作りはできないんじゃないかなぁ。いまは、いまの良さを探していくべきだと思うんですが、僕はその時代の映画を観るのが好きなんですよねぇ。
※このインタビューの全文は、『本田礼生のこもりっぱなし』(2023年3月17日(金)発売)にてお読みいただけます。
* * *
本書では、本記事を含めた連載全13回の他、書き下ろし3回を収録。【通常版】に加え、動画(全3種よりランダム)と、ポストカード付きの【NFT版】、特製フレークシール付きの【Amazon限定版】の3バージョンで、好評発売中です。
詳しくは、こちらの記事、もしくは太田出版公式サイト(『本田礼生のこもりっぱなし』特製POPを配布中!)をご確認ください。