『ラヴィット!』(TBS)で誕生したHIP HOPグループ・赤坂サイファーで“切り込み隊長”を務める見取り図・盛山晋太郎。番組やイベントで即興ラップを披露するなどラップと造詣の深い盛山は、クルーの代表曲「Love it Wednesday」の楽曲提供をした梅田サイファーとも親交が深く、この企画の立役者である。
そんな盛山に改めてラップを始めたきっかけやHIP HOPアーティストたちとの出会い、そして赤坂サイファーについて聞いた。
※こちらのインタビューの一部は、8月29日(火)発売の『Quick Japan Special「ラヴィット!」』にも掲載されています。
それぞれの個性が表現されたリリック
──今回は赤坂サイファーの“切り込み隊長”でラッパーの盛山さんにいろいろとお聞きできればと思います。
盛山晋太郎(以下、盛山) (ダルそうな声で)……よろしくお願いします。
──先日の『ラヴィット!』(2023年6月20日放送)で初披露した「Love it Wednesday」の手応えを教えてください。
盛山 (爪をイジりながら)ああ? まあ、40点ぐらいかもしれんな。僕は100点やったんですけど、いやぁ、素人が多かったんで。
──……はぁ。確かに盛山さん以外はラップ未経験者でしたね。
盛山 うん、素人。僕はラップとか好きなんで。もうちょっとステージングとか皆さんに教えたかったですねぇ。クルーってやっぱりフォーメーションあったほうがかっこええんで。横一列が一番ダサい。だから、『ラヴィット!ロック』ではもうちょっと仕上げたいですわ。
──でも、最初に盛山さんがラップをキメたことで、すごく勢いがあったように感じましたが。
盛山 そうっすね。僕のヴァースはKZさんがノリやすい、基本型のラップにしてくれたんで。でも、もうちょっと難しいラップにチャレンジしたかったですね。できることなら、あの一曲の全ヴァースをキックしたかったわ。
──もはやサイファーじゃない。
盛山 (あっさりと)だから、ソロデビューしたいんですよ。
──今回の楽曲を渡されて2週間、どのように練習されたのでしょうか?
盛山 僕、カーシェアを利用しているんですけど、車内で爆音のビート流して練習しました。これが一番いいんですよ。
──そうなんですね。
盛山 (しばらく沈黙して)……このイキっている感じで伝わりますかね?
──キャラづけしてくれていたんですか(笑)。ありがとうございます。
盛山 本音で話すとサイファーのみんなすごかったですね。すゑひろがりずの南條(庄助)さんとかめっちゃええなと思いました。リリックも声質もフローも個性あふれまくってて。あと、ロングコートダディの堂前(透)もあの佇まいでラップができるっていうギャップがよかったですね。
──最初に梅田サイファーからリリックをもらったときの感想も教えてもらえますか?
盛山 リリックに遊び心があふれてておもしろかったですね。もらってすぐに考察もしたんですよ。まず、南條さんの“光/映写機/いざゆかん”は「ライツカメラアクション」の日本語変換ですね。
──映画の撮影のかけ声からサンプリングされたHIP HOPではおなじみのフレーズですね。
盛山 いいですよね。あと、(アルコ&ピース)平子(祐希)さんの“オフロシュランのドン/on the floor/平子”の「風呂」で踏む感じもエッチやなと思いました。そのあとの酒井(健太)さんの“草間の影から湯も含もうとするえぇグループ”で一緒にロケをしてる「Aぇ!group」の名前が入ってますしね。かけ声の“ユノンセン”もよかったです。
──こちらもよくラッパーが使う“You know what I’m saying”と「湯」「温泉」をかけていますね。
盛山 アルピーさんのヴァースは全部すごいですよね。個人的には、兎のヴァースが一番かっこいいと思いましたね。母音じゃなくて子音で踏んでいるんですよ。
──確かに“兎(usagi)だが/調子は鰻(unagi)登り”といった感じで最初から子音で踏んでますね。兎さんは気づきながらラップしてたんですかね?
盛山 いや、気づいてないと思う(笑)。しかし、挙げていったらキリがないくらいギミックが多くて。梅田サイファーさん、だいぶ僕らのこと調べてくれてますね。
KZさんは初バトルの対戦相手
──これまで盛山さんと梅田サイファーはさまざまな場所で共演を重ねてきましたが、現在、どんな関係性なのでしょうか?
盛山 ラップ始めたのが5、6年前くらいなのですけど、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)で観たR-指定さんが衝撃で僕もフリースタイル始めたんですよ。それで最初に出た大阪のちっちゃな箱でやっていたMCバトルで対戦したのがKZさん。僕のデビュー戦の相手が今回のリリックを書いてくれたっていう。まあ、今考えたら、何してんねん!って話ですけど(笑)。
──その試合はどうなったんですか?
盛山 それが奇跡的に勝ったんですよ。当時はラップのやり方を知らなかったんで、音楽にノセて、韻も踏まんとボロカスに言うだけ。初めましてやったんで、そのときはそんなこともできたんですけど、普段の僕は人を悪く言いたくないんで。今でも芸人同士がエグいことを言い合ったりするラップ番組もありますけど、僕はそういうの苦手なんで、お断りしています。
──性格のよさがにじみ出るエピソードですね(笑)。
盛山 KZさんに勝ったあと、梅田サイファーに参加したこともありますね。梅田に集まってるってSNSで見かけて、現地に行ってみたんです。そしたら、本当にメンバーが輪になってラップしていて、僕もラップしながら入りましたよ。そこで初めてR-指定さんにも会いました。『8mile』みたいな出会い方をしてますね(笑)。
──梅田サイファー以外にも、交流のあるラッパーっていますか?
盛山 昔、大阪で『口達者』っていうラッパーと芸人がMCバトルをやるイベントを主催していたことがあったんです。で、司会として出てもらってた韻踏合組合のHIDADDYさんとは顔見知り。ばったり大阪の街で、スケボーに乗ったHIDADDYさんと会ったこともありますね。それで、「茶しばきましょうよ」って言われて喫茶店に行ったら、B-BOYの「B」の定義を1時間半聞かされました(笑)。
──そんなことが。
盛山 俺、今、何を聞かされてんねんって思いました(笑)。まあ、おしゃべりな方なんで。それと、イベントにも出てもらった呂布カルマさんも飲みに行ったことがありますよ。ラッパー界隈の話はドギツい話も多くて、やっぱおもしろいですね。
ギャングスターなラッパーへの憧れ
──ダンジョンをきっかけにラップを始めたという話もありましたが、どうやってスキルを磨いたのでしょうか?
盛山 スキルって……僕、ラッパーちゃうんで(笑)。でも、朝起きたときにビート流して、目に映るものをラップしてますね。“歯ブラシ/肉体はたくましい”とか。
──盛山さんの今のスタイルに影響を与えたラッパーを教えてください。
盛山 やっぱりEMINEMっすかね。それとR-指定さんにも影響されましたね。なんであんなに踏めるのか、脳みそ見てみたいですね。あと高校のときはKREVAさんの切り抜き写真を美容室に持っていって「同じ髪型にしてくれ」ってよう言ってましたね。
──そのころはどんな音楽を聴いてたんですか?
盛山 当時はKREVAさん、ZEEBRAさん、RIP SLYMEとかオリコンチャートを賑わすHIP HOPくらいしか聴いてなかったですね。僕は軽音部に入ってたので、ハイスタ(Hi-STANDARD)やSNAIL RAMPとかいわゆるメロコアを聴いてて。あと、ゴイステ(GOING STEADY)の追っかけをしてましたね。だから、ラップ聴き始めたのはほんとにダンジョン以降ですね。
──今、フェイバリットなラッパーも教えてください。
盛山 大阪のベテランバンド、韻シストはずっと好きですね。最近だと、「バイト飛びたい」を歌っているぜったくんも聴くし、ゴリゴリなラッパーだとBAD HOP、ZORN、RYKEY DADDY DIRTY、舐達麻も聴きますね。
──幅広いですね。
盛山 あとMC TYSONっていかついギャングスターラッパーがおって、最近はめっちゃ聴いてますね。その子から、突然DMが来たんですよ。どうやら同じ高校の後輩らしくて。でも、そんなん知らんで聴いてました。
──ギャングスターなラッパーから影響を受けることはありますか?
盛山 ありますねぇ。僕もホンマにブリンブリンが欲しいですもん。あと、舐達麻のやっている「APHRODITE GANG HOLDINGS」のグッズも欲しくて。狙っているんですけど、マジいつも即完なんで。
──めちゃめちゃヘッズな感じしますね。
盛山 赤坂サイファーやったとき、始まる前にずっと咳き込んで、「(しゃがれた声で)ええん、ヨーヨー」ってやっていたんですけど、あれは舐達麻を意識していました。あの咳払い、かっこいいですよね。
──BADSAIKUSHみたいに。
盛山 そう、バダザイ。でも、ほかのみんなもまねして同じことやってきたからジャマでしたね(笑)。『ラヴィット!』のオープニングのライブで出してほしいっていつもスタッフに伝えるんですけど、なかなか実現しないですね。
──これまでに接点はないんですか?
盛山 ないんですよ。以前、QJWebのインタビューで柄シャツ着て、難波の街をタバコ吸いながら歩いた写真を撮ったんですけど、舐達麻をちょっと意識してたらメンバーのG-PLANTSさんが反応してくれたみたいなんですよ。ちょっとだけつながれましたね。
──いつか共演できるといいですね。
盛山 そうっすね。でも、いいんかなっていうのはありますけど(笑)。
聖徳太子ラップは98%はスベる
──今後、ご自身でもリリックを書いてみたいですか?
盛山 やってみたいですけど、リリック書くってめっちゃ難しいですよね。
──それこそ2018年にリリースした「ショーバン」では書かれていましたが。
盛山 あんなん、大喜利をつらつらやってるだけなんでリリックでもなんでもないです(笑)。
──フリースタイルみたいにはうまくいかないんですね。盛山さんがテレビやイベントで「聖徳太子ラップ」をカマすのが最近では定着しつつありますが。
盛山 でも、あれは98%はスベりますよ(笑)。
──あれって急に振られるものなんですか?
盛山 そうですね。急に振られたほうがええんで、そうしてもらっています。事前に聞いてるとハードル上がるじゃないですか。僕はラッパーちゃうんで、失敗しても大丈夫って思ってやってます。
──最後の質問になりますが、フリースタイルをやっていたことが芸人活動に活かされたことってありますか?
盛山 これがね……マジでないんですよ。もしかしたらお笑い活動においていらないことなのかもしれないですね、ラップって。変にラップできるようになってもおもしろくないんですよ。やっぱり『フリースタイルティーチャー』(テレビ朝日)とか観てても思うんですけど、芸人はラップヘタなほうが笑えますもん。
──あの番組はご覧になられているんですね。
盛山 観ますよ。最近は、僕も知らないような他事務所の若手がいっぱい出てて。マジのラッパーみたいな子ばかりじゃないですか、スキルが。特におとんどぅの福田(遼平)っていうやつが、むっちゃ踏み方がおもしろくて、いいラップしますよ。だから、僕のラップ系の仕事は近い将来、後輩たちに取られていくと思いますよ。
盛山晋太郎
(もりやま・しんたろう)1986年1月9日生まれ、大阪府出身。2007年にリリーと見取り図を結成。『M-1グランプリ』では、2018年より3年連続で決勝進出。『ラヴィット!』(TBS)では水曜レギュラーとして出演中。
赤坂サイファー
(あかさかサイファー)水曜レギュラーの見取り図を中心にアルコ&ピース、すゑひろがりず、ロングコートダディで結成されたHIP HOPグループ。2023年1月25日放送の『ラヴィット!』に梅田サイファーがゲスト出演し、KZが『スマッシュブラザーズ』でスタジオメンバーと対決。この戦いに盛山が勝利したことで、梅田サイファーから楽曲提供を受けることが決定した。
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8月29日(火)発売
ISBN:9784778318871
定価:1,540円(税込)