今ではすっかり見ることもなくなったが、かつては当たり前だったのが、映画の漫画化=映画コミカライズ。新作映画に触れられるメディアが少なかった昭和時代、少年少女たちは、漫画誌に掲載されたコミカライズ作品に心をときめかせ、そして映画館に足を運んだものだ。映画コミカライズの黄金期には、どんな映画作品が漫画になっていたのか?
『シネマズPLUS』公式コラムニストの滝口明氏が、2018年11月20日発売の『CONTINUE Vol.56』でピックアップした海外映画のコミカライズ作品の名作を紹介しよう(各作品の説明は滝口氏)。
・『タワーリング・インフェルノ』(田辺節男/月刊少年チャンピオン/1975年7月号)
『週刊少年サンデー』巻頭グラビアに掲載された、さいとう・たかを先生によるオールカラー版も良いが、この『月刊少年チャンピオン』掲載の、田辺節男先生版がやはりベスト! スティーブ・マックイーン演じる消防隊長の性格が、なぜか武闘派の男気溢れる男に変更されていて、アツい名セリフが次々に飛び出すので必見!
・『キングコング』(一峰大二/別冊テレビランド/1976年12月号)
二種類存在する本作のコミカライズ版だが、『月刊少年マガジン』掲載版よりも、こちらの『別冊テレビランド」掲載の一峰大二先生版が絶対オススメ。見開きページを多用したコングの暴れっぷりが迫力満点な本作だが、特に泣けるのが映画版の100倍素晴らしいラストシーン! ああ、この内容でリメイクしてくれたら……。
・『ロッキー』(野田たみ樹/月刊少年マガジン/1977年5月号)
公開当時、『月刊少年マガジン』に掲載された本作は、その高い完成度にも関わらず、知る人ぞ知る隠れた名作となっている。作者は女性漫画家の野田たみ樹先生。まるで『あしたのジョー』を思わせる迫力の試合シーンに加えて、女性ならではのラブストーリーの描き方が素晴らしい傑作コミカライズとなっている。
・『エマニエル夫人』(真崎守/真崎守選集19『残照』収録)
なんと当時の『週刊読売』に掲載された、このコミカライズ版。しかも奇跡的に作者である真崎守先生の選集に収録されており、現在でも全編2色カラーで読むことが可能だ。実はこれ以外にもう1本、『週刊漫画サンデー』に4回に渡って掲載された作品も存在するが、こちらはフランス風の洒落た絵柄で日本人には合わなかった。
・『プロジェクトA』(高橋わたる/ケイブンシャ刊のコミックス)
雑誌での定期掲載が少なくなる80年代には、このように書き下ろしコミックスとしての出版が多くなっていたコミカライズ版。ページ数が格段に増える反面、単に内容が映画のトレースに終わったり、ページ数を持て余して中身が薄くなったりする場合も多いが、本作はジャッキー映画ファンも大満足の内容となっている。
・『ロボコップ』(岩ヨシヒロ/月刊少年ジャンプ/1988年3月号)
映画コミカライズの意義と本質を見事に体現した、1980年代コミカライズ作品中屈指の名作。後のリメイク版『ロボコップ』の内容を予見していたような、マーフィの息子との絆を物語の中心にした見事なアレンジが素晴らしい! 加えて、マーフィの薄情な妻がさっさと殺される展開も、まさに大正解と言える。
◆CONTINUE Vol.56(2018年11月20日発売)
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・CONTINUE Vol.56
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