家庭料理の楽しさを教えてくれるEテレの『きょうの料理』は、放送開始が1957年という超長寿番組。インターネットが普及した今、スマホでレシピサイトを検索する人も多いなか、料理の楽しさを伝えたいという姿勢は、番組収録のスタイルにも表れています。
料理番組といえば、手際よく作り方を伝えるために、細かい手順をカットすることが多いもの。しかし『きょうの料理』では、25分の収録を生放送のように基本ノーカットで撮り下ろします。
小誌が取材に訪れた人気講師の“ばぁば”こと鈴木登紀子さんの収録回では、旬の食材を使った「さばの鍋照り」と「かきフライ」の作り方を、名コンビである後藤繁榮アナウンサーと一緒に紹介。「かきは大根おろしで洗うと簡単に汚れが落ちる」といったトリビアも解説しながら、ぴったり25分で収録を終えていました。その見事な手際に、カットがかかった瞬間にはスタジオで拍手が起こったほどでした。
もちろん事前に入念なリハーサルを行ったうえで収録に臨んでいるわけですが、どうして生放送のようなスタイルにこだわっているのか? プロデューサーの大野敏明さんは、こう説明しています。
「基本ノーカットは番組の伝統なんです。放送が始まった1957年には、テレビは生放送が当たり前で、収録時間内に作り終えなければならなかった。そのためにレシピを考え、効率のいい解説の仕方を考える。これには今もすごく時間をかけます。だいだいメニューは半年前から準備していますね。
番組のスタッフとテキストのスタッフで頻繁に打ち合わせをして、どういう料理にするか、どう紹介するか、どの先生にお願いするか考えます。レシピが決まったら、今度は何度も試作をして、本当に収録時間内に作れるのか、視聴者の方が見たり読んだりして真似できるのか検証する。その歴史が脈々と続いているんです」
◆ケトル VOL.34(2016年12月14日発売)
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