「ほんやくコンニャク」は実現可能? 最先端音声翻訳システムのレベルは

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ドラえもんのひみつ道具のなかでも、とりわけ有用性が高そうなのが、食べるといかなる外国語も理解可能になる「ほんやくコンニャク」。会話している同士のタイムロスが一切ない、夢の翻訳機として知られているこの道具に、最も近い音声翻訳システムを開発したのが、奈良先端科学技術大学院大学の中村哲教授、ニュービッグ助教授の研究グループだ。

「従来の音声翻訳では、文が終了してから翻訳するというシステムをとっていました。それゆえ、一文が長い場合は文章が終わるまで翻訳を待たなければならず、発言から翻訳までの間にタイムロスが生まれていたんです。そこで我々は一文をそのまま訳すのではなく、『長い一文を短い単位に分割し、随時訳する』というシステムを採用しました」

従来は文末まで約5秒待つ必要があったが、この結果、1~2秒での翻訳が可能に。しかし、途中から一文を訳し、最後にちゃんと意味が通る文に仕立てあげるのは熟練の通訳者でも至難の業だ。現在、主に英語と日本語の同時通訳を研究中だが、一番の難問は日本語と英語など文法が大きく違う文章をいかにスムーズに訳すかということだった。

「たとえば、英語は『主語+動詞+目的語』が基本ですが、日本語は『主語+目的語+動詞』と逆転が起こったり、主語がないこともある。また、英語は『not』という否定語が文中にくるけど、日本語は『…ない』などの否定語が文末に来るので、最後まで文意が逆転するかがわからない。だから、途中から訳してよい文章と、ダメな文章をシステムに把握させることが、この研究の大きな課題でした」

人間の同時通訳と同じ働きを可能にするため、中村教授は、日英対訳の例文を100万文、単語250万語という膨大なデータを入力し、文意が逆転するなどの特殊例をパターン化して覚えさせた。

現時点では「1年目の新人通訳さんの翻訳力レベル」ではあるものの、「技術は6~7年でだいぶ進化するものなので、2020年頃には格段に進歩している可能性もあります」というこの音声翻訳システム。東京五輪時には、誰もが母語だけをしゃべっても会話が成立するような“リアルドラえもん”の世界が待ち受けているかもしれない。

◆ケトル VOL.17(2014年2月15日発売)

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。