子どもの時にお気に入りだった絵本は、一生忘れないもの。天下の名城・松本城が有名な長野県松本市の「たつのこ書店」は、自分だけの思い出の一冊にきっと出会える絵本専門の本屋さんです。
松本城の城下町、下町風情が残る縄手通り商店街沿いに佇む「たつのこ書店」。木造の長屋風の建物が連なるその外観は、商店街のなかでも見た目からして様子が違います。『11ぴきのねこ』『もりのなか』などの懐かしい名作絵本がディスプレイされたガラス張りの店内に足を踏み入れると、そこはまるで絵本の世界。木の香りが漂う板張りの店内に、モコモコの椅子やカラフルなおもちゃの数々、子供サイズのテーブルと椅子。壁一面にある本棚には、国内外の絵本がずらりと並べられています。
「スペースが狭いので、普通の本屋さんにある本はあまり置いてません(笑)。でも、うちの本は一般書店では取り扱いできない絵本が結構多いんですよね。たとえば福音館の古い絵本は出版社の人からも『なんでこんな希少本があるんですか!』と驚かれますよ」
と語るのは、たつのこ書店の2代目・中川風太さん。というのも、もともとたつのこ書店は児童書の行商からスタートしたお店で、長年行商として培ってきたつながりがあるからこそ、大型店にはないレア絵本が並んでいるのです。
「お客さんにも『買いたい本が決まっているときは大手の書店さんへ。もし欲しい本が決まっていなくて新しい出会いを求めているのなら、ぜひうちへ来て下さい』とお伝えしています」
大型店にない絵本を、あえて揃えておきたい。それゆえ『ハリー・ポッター』シリーズなどの売れ筋ラインは、一切置かない潔さ。でも、『はらぺこあおむし』『ドリトル先生』シリーズなど不朽の名作ははずさないからこそ、ここに来れば誰もが懐かしの一冊にきっと出会えるわけで、中川さんは、
「開業して30年経つので、親子3代にわたって通ってくれるお客さんも多いです。子供の頃に本を買いに来ていた人が、大人になってお子さんに自分が子どものときに読んだ本を買っていく。あとは、自分がかつて読んだ絵本を発掘してはお互いに本を薦め合うカップルも多いです」
と語っています。
※たつのこ書店:松本市大手4-3
◆ケトル VOL.18(2014年4月15日発売)
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