「まったく、ここも汚えババアがいっぱいだな!」
そう言われて、中継先に集まったお年寄りがみんな笑顔になる。1969年から始まったTBSラジオの名物長寿番組『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』ではおなじみの光景ですが、実はレポーターのマムシさんが初めて「ババア」と言ったとき、局には苦情が殺到しました。
というのも出演を始めたばかりの頃のマムシさんは、「お婆ちゃん」と呼びかける丁寧な言葉遣いがトレードマーク。しかし4年目に転機が訪れます。母親が亡くなった直後の放送で、やたらと元気がいいお婆さんと遭遇。肉親が亡くなった悲しみが癒えていなかったことから、「憎らしいほど元気なババアだよ!」と言ってしまったのです。
その場は静まり返り、放送後は抗議の電話が山のように届きました。しかしスタッフも局もマムシさんに文句は言わず続投を決定。その後はマムシさんが「ババア」と言うたびに中継先へ集まるお年寄りは増えていきました。今ではすっかり老人のカリスマ。番組も48年目を迎えています。
マムシさんは、著書『毒蝮流 ことばで介護』で、お年寄りと接するコツは「笑って話しかける」「肩に手をかける」「気にかける」という3つの「かける」だと明かしています。簡単にマネをするのはなかなか難しそうですが、「ババア」という呼びかけには、深い愛情と経験で培ったテクニックが込められているのです。
◆ケトル VOL.39(2017年10月16日発売)
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