EU離脱で注目されるイギリス 欧州の小国はなぜ「大英帝国」と呼ばれる?

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現在、世界中で関心を集めているニュースが、イギリスのEU離脱(ブレグジット)。1月15日に英議会下院で行われたEU離脱合意案に関する採決は圧倒的大差で否決され、先行きが不透明な状況が続いていますが、そもそも日本よりも狭いイギリスがなぜ「大英帝国」と呼ばれているのか、ピンと来ない人も多いかもしれません。『図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史』(太田出版/インフォビジュアル研究所、大角修・著)では、このように説明しています。

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イギリスの海洋進出は17世紀に北アメリカ東海岸にニューイングランドをはじめ13州の植民地をつくったころから始まりました。海軍のジェームズ・クック(1728~1779年)がオーストラリア、ニュージーランド、ハワイ諸島などを探検して海図を作成し、イギリスの太平洋進出の足がかりをつくります。そのころ、イギリスは世界に先駆けて産業革命を迎えました。

産業革命は石炭を用いての製鉄、石炭を燃料とする蒸気機関の発明によって起こりました。ジェームズ・ワットが発明した蒸気機関は1776年に鉱山の揚水機の動力として初めて実用化されました。続いて18世紀から19世紀初頭にかけて蒸気船と蒸気機関車が実用化されます。この運輸部門の機械化に加えて、18世紀後半に水力、蒸気機関の紡績機の発明によって製糸の機械化が進み、力織機も発明されて布の生産が機械化され、綿糸・綿布の生産量が飛躍的に増大しました。

その原料の綿花の大産地になったのがインドでした。インドは伝統的に手工業による綿布の生産が盛んでしたが、手仕事で作られる綿糸・綿布は質にばらつきがあるうえ、人件費が嵩かさむために高価でした。それに対して機械工業の綿糸・綿布は上質で安価です。そのため、インドは綿花の産地であると同時に綿布の消費地になりました。さらにイギリスの東インド会社はインドで作られたアヘンを清(中国)に輸出し、茶や銀を輸入する形で三角貿易とよばれる経済構造を作り上げ、植民地化によって、その構造を強化しました。

東インド会社とは国策に沿ってアジアに設立された貿易会社ですが、軍をもつ組織でした。その軍によってインドの内政に介入し、植民地にしていきました。そのほか、セイロン島(スリランカ)、オーストラリアなどにイギリスは植民地を拡大し、世界にまたがる大英帝国を築きました。そのイギリスを中心とする世界秩序はパクス・ブリタニカとよばれます。

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イギリスには多くの日本企業が進出しており、ブレグジット騒動は我々も無関係ではありません。「かつての栄華」と言ってしまえばそれまでですが、オーストラリアやインドなどでは、今もさまざまな面でイギリスからの影響が残っており、「大英帝国」の名残は今も世界中に存在しているのです。

同書ではこの他、民族、気候、交通、文字、貿易、宗教、帝国、通信、武器、法律、資源、農業、工業、科学など、様々な角度から世界の繋がりを図解でわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史』(太田出版/インフォビジュアル研究所、大角修・著)は2019年1月17日発売。価格は1200円+税。

【関連リンク】
図解でわかる 14歳から知る影響と連鎖の全世界史-太田出版

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。

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