独自の世界観で注目のサックス奏者・石川周之介が語る「日本のジャズシーン」

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ジャズサックス奏者・石川周之介がアルバム『Mind Your Step』を9月16日に発表した。石川は、自身のプロジェクト「Uit Nederland(アウトネーデルランド)」でのパフォーマンスのほか、野宮真貴、畠山美由紀、中塚武、青木カレンといった多彩なジャンルのヴォーカリストをサポート。さらに2013年にはマイケル・ジャクソンの音楽プロデューサーとしても知られるクインシー・ジョーンズの32年振りとなる来日公演のビッグバンドにも参加するなど、幅広く活躍する注目のサックスプレイヤーだ。

そんな石川にリリースしたばかりのアルバムの魅力、9月に敢行した欧州ツアー、さらには日本のジャズシーンについて話を聞いた。

「アルバムのコンセプトは『季節のある風景』です。自分のバンドで演奏する時、常に聴いている方々の頭の中に、それぞれの季節の風景を思い描いて欲しいと思っています。ときには春の大自然であったり、別れの時期の空港の出国ゲートであったり、秋の夜長の高速道路であったり……。ちなみに、今回のアルバムの中では『雨琴 —yuuchin—』(ユーチン)という曲がもっともそのコンセプトを体現しています」

アルバムの中でもひときわ独特な世界観を放つバラード曲『雨琴 —yuuchin—』。極めて東洋的な旋律とそれを繊細に表現する石川の息づかい、そしてピアニスト、ベーシスト、ドラマー各々が魅せる叙情的なプレイは、聴くものに“竹林に静かに降る雨”を想起させる。特に、音の濃淡をコントロールしながらテナーサックスに息を吹き込む石川の演奏は、水墨画家の筆運びを思わせる。

石川のライブでも度々、演奏されるこの佳曲は先に行われた欧州3カ国ツアーでも好評だったようだ。

「やはり日本らしさ、東洋的な響きが新鮮だったのだと思います。曲の途中でフリーになる箇所があるのですが、そうしたアプローチも欧州の方が好むところ。この曲に限らず、あちらのお客さんは非常に熱心に我々の演奏に耳を傾けてくれました。また、今回のツアーでは、オランダのロッテルダム音楽院時代からお世話になっているサックス奏者のベンジャミン・ハーマンさんとも競演できたことがなにより嬉しかったですね」

欧州ツアーでの成功に、たしかな手応えを感じたという石川。最後に、単刀直入に日本のジャズシーンについて話を聞いた。

「日本は世界でも屈指のジャズ大国だと思います。東京のような大都市だけでなく、地方都市にも必ずジャズクラブやジャズの生演奏をするライブハウス、ジャズ喫茶がある。しかも、そこには熱心なリスナーが聴きに来てくれる。全国津々浦々、ここまでジャズファンのいる国は、少なくとも僕が知る限りはありません。海外のミュージシャンに聞いても、日本で演奏することを楽しみにしている人は多いですからね。

ただ、日本のリスナーは総じてかしこまって聴く傾向は強いかもしれない。海外とのもっとも大きな違いはそこかな。原因のひとつはやはり環境。もう少しカジュアルに聴いてもらえるような環境があればいいですよね。自分自身でも、より多くの人の日常に溶け込むような、“身近な音楽”を作っていきたいと思っています。それが今後の目標でもあり、僕のライフワークにもなってくるのかなと」

プロフィール
石川周之介(いしかわ しゅうのすけ):サックス/フルート/ボサノバギター奏者。米ニューオリンズ大学とオランダのロッテルダム音楽院でアメリカとヨーロッパ、それぞれ異なるスタイルのジャズを学んだ後、2007年に帰国。ジャズプロジェクト「Uit Nederland」やファンクバンド「Soviet Chance」でリーダーを努めるほか、数多くのヴォーカリスト、ミュージシャンのサポートも行う。

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※この記事は、「太田出版ケトルニュース」に当時掲載した内容を当サイトに移設したものです。