宗教2世が経験する、体罰や価値観の強要

学び
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2022年11月25日に緊急出版された荻上チキ編著『宗教2世』。本書に掲載されている「社会調査支援機構チキラボ」による宗教2世当事者1131人へのアンケート調査は、NHK・日テレ・TBS・テレ朝・朝日新聞・毎日新聞・読売新聞など各メディア、そして国会でも取り上げられて話題となった。2022年12月に発表された「新語・ 流行語大賞」には、「宗教2世」がトップ10に選出され、授賞式には本書の編著者・荻上チキが登壇している。宗教2世たちの苦しみとは、具体的にどんなものなのか? その知られざる実態について、『宗教2世』よりチキラボによる大規模調査の分析と結果を、当事者たちによるコメントと共に、一部試し読みとして公開する。

※以下、児童虐待に関する具体的な記述が含まれます。フラッシュバックなどを引き起こす可能性がありますので、体調には十分留意して読み進めてください。

体罰や価値観の強要

調査では、「信仰に関連する行事などへの参加」以外にも、家族に強要されていたことについて、いくつかの項目を尋ねている。

具体的には、「信仰を理由にした体罰」「信仰を理由とした恋愛や交友関係の制限」「信仰を理由とした学業や職業選択の制限」の3つ。これらについて、家族が強要した期間を「0-5歳」「6-9歳」「10-12歳」「13-15歳」「16-19歳」「20歳以降」「強要されたが時期は覚えていない」「強要されたことはない」という選択肢で該当する期間に回答してもらう(複数選択可能)方式で把握した。全体の結果は、図3のとおりであった。

宗教ごとの違いもみてみよう(図4)。全体としてキリスト教系は、ほかの宗教と比べて、体罰をはじめ、各種の強要経験が多かった。ただ、仏教系などでも、一定の経験率があるのは見逃せない。体罰を教団として強く勧めているわけではない宗教であったとしても、「宗教を理由とした体罰」が信者や家族のなかで行われる可能性はあり、それを体験した2世も間違いなくいる。

教団ごとに見てみよう(図5)。

どの教団も、「行事参加強要」および「体罰」については、6-9歳をピークに減少していく。教団ごとに見ると目立つのが、エホバの証人の体罰経験率の高さであった。なお、体罰経験について、男女間で大きな差はなかった。一方で行事参加の強要は、女性のほうが年齢が上がっても強要され続ける可能性が示唆されたのは、先ほどみたとおりである。

学業や就業の制限についても、エホバの証人が最も多い。エホバの証人の場合、高等教育を受けることなどに、否定的な価値観を伝えられることになる。他方で、制限が少ない創価学会の回答者でも、「創価大学に入りなさい」と繰り返し求められたことがプレッシャーであったという記述もあった。恋愛制限については、S1-7で触れることとする。

「宗教的虐待」(スピリチュアル・アビュース)

エホバの証人のような露骨なものでなくても、信仰と虐待は根深い関わりを持っている。

宗教組織の家父長制的価値観と信者のDV認知の関係を明らかにした、興味深い研究がある。2018年の意識調査のデータを用いて分析を行ったオーストラリアの研究では、宗教的礼拝への参加、祈りの頻度、霊的・宗教的アイデンティティが、家父長制的な信念と関連していることが示された。

さらに、頻繁に宗教へ関与することと宗教的アイデンティティを抱くことは、参加者自身の信仰共同体におけるDVの不認識と関連していた。つまり、宗教への献身と家父長制的な信念が強い人ほど、信者集団内部のDVを問題視しにくい傾向が見出された(Priest et al., 2021)。

「正しい信仰のためなら暴力ではない」「正しい宗教なのだから暴力は見て見ぬふりをしよう」「暴力こそが正しい教義である」。どのような口実でも、暴力は暴力だ。また、暴力以外の手段を用いていたとしても、子どもの権利を侵害する行為は、虐待だ。宗教に絡めて子どもの権利を侵害することについては、「霊的虐待」「宗教的虐待」という言葉が用いられることもある。

もともとDVや虐待には5つの類型があると指摘される。具体的な暴力を加える「身体的虐待」、暴言や恫喝などによる「心理的虐待」、性的な行為や接触を伴う「性的虐待」、必要な食事や医療などを与えない「ネグレクト(放置)」、そして必要な金銭を与えず、むしろ財産を不当に処分するような「経済的虐待」である。これらの分類は、行為をベースとしたものだ。

たとえばエホバの証人のように、子どもに「ムチを振るう」ことを良きこととするのは、身体的虐待に当たる。また、献金活動などによって貧困になることなどは「経済的虐待」、特定の授業を受けさせない、進学をさせないことは「(教育)ネグレクト」といったものに該当する。

一方で宗教的虐待は、これらに加えた6つ目の類型というより、「夫婦間DV」「デートDV(恋人間のDV)」「児童虐待」「高齢者虐待」のように、不当行為が行われる状況をベースとした分類として理解できる。信仰を押し付ける。宗教行事を押し付ける。宗教や信仰の名を借りて、さまざまな強制、ハラスメントや体罰を行う。宗教的虐待は、こうしたさまざまな行為の総称として用いられている。

ただし、「信仰の自由を奪う」(信仰を押し付ける)という一点に絞る場合、「霊的虐待」「宗教的虐待」といった言葉でのみ、把握可能な侵害の実相がありうる。さまざまな行為や手段を駆使することを差し引いても、「信仰を押し付ける」「特定の信念を持つように強要する」こと自体が、子どもの権利を奪うものであることは、より広く知られるべきだろう。

親からの声掛けが「呪い」のように長期間残り、人格形成などに深い影響を与えること。こうしたことは、宗教的虐待に限らない。親からの暴力や暴言が、その人の思考の基本的な「型」(スキーマ)を形成し、ことあるごとに「タブーを犯してしまっている」「自分は堕落している」などといった自動思考に縛られることは、あらゆる虐待被害者にも見られる。トラウマ形成や複雑性PTSD、うつやパニックなどの経験も同様である。

他方で、宗教的虐待(宗教関連虐待)は、信仰集団などを含め、特定の価値観を共有した人々から、連続的に加えられやすい。また長期間にわたって、特定の世界観を持つことを強要されるという、「信念への意図的な介入」が行われやすいという特徴もある。その点に着目すると、2世や脱会者にとっては、個人のスキーマ(思考の型)をいかに作り直すかという長期的な課題と向き合わされやすいともいえる。

身体的虐待(体罰・暴力)

◎信仰を軽んじて、奉仕や集会に参加しないなら死ぬ、と言われた。体罰がひどくて、殺されそうになったことも何度もある。いつもハルマゲドンへの恐怖に縛られていた。親が包丁を持っている姿を想像するように言われ、殺してでも連れて行くと言われた。

◎集会や布教に行きたくないと言うと、お尻を出して電気コードで何十回も叩かれました。皮膚が裂けました。親は、宗教活動をしないと本当に世界の終わりに滅ぼされるという教団の教えを信じていたので、これも親の愛なんだと思うように仕向けられていました。

◎集会所には懲らしめの部屋があり、誰でも使える草でできたムチが、複数置かれていた。叩かれていた時はものすごい恐怖を感じたが、自分が悪いんだ、とも思っていた。

◎「ムチ」と称して尻を叩かれていました。教団の集会場には、大人しくしない子どもを叱りつけるため、トイレに子どもがひとり横になれるベッドがあって、布団の下に定規が隠されていました。つまり定規で尻を叩けということです。

◎お祭りや友達の誕生日パーティーも行きたいと言うと、ムチで叩かれます。友達からの誕生日プレゼントも自ら捨てるよう指示されました。受け取ってしまった時点で体罰です。悲しくて、友達にも悪いなという気持ちでいっぱいでした。

◎叩かれて、お尻から太ももにかけてひどいあざになり、座ることができなかった。体育の時、当時はまだブルマ着用だったので、太もものあざが見えてしまう状態で、先生や友達に心配されたが、本当のことが言えず、「転んだ」と噓をついた。

◎親たちが、何で叩けば一番自分の手が楽で痛みが強いかを相談していて、狂っていると思った。

◎親がそもそもサディスト気質なのか、叩いてる最中、笑いをこらえていた表情が、恐怖として脳裏に焼き付いている。

◎方針に従わないと日常的に蹴られたり、殴られたりしました。真冬に水を頭からかけられたこともありました。家畜の糞置き場に閉じ込められたこともありました。小学生の頃は、ただただ恐ろしくて、服従するしかありませんでした。

◎二時間を超える集会中の正座。足を崩しても良いが、会場はぎゅうぎゅう詰めになるので、容易ではなかった。また、親から「できるだけ正座しろ、あの子はできてる」など言われた。足が悪い人のための椅子などもあったが、子どもが言い出せる空気ではなかった。非道。

◎小学四年生のとき、教団の発行する新聞を誤って破ってしまったら、思いっきり殴られた。この宗教は変だと、そのときに気が付いた。

◎活動をサボるなど些細な悪さをした場合に、仏壇の火がついた線香を押し付けられた。

◎主に祈禱の仕方を理由に父から体罰を受けていました。姿勢が悪い、声が小さい、集中していないなど。体罰の内容としては、煙草の火の押し付け、殴る、蹴る、厳寒期に外に放置するなど。父はとても外面が良い人だったので、暴力を受けていると訴えても、誰にも信じてもらえないと思っていました。

◎意に反して裸足でたき火の上を渡らされたり、早朝に起こされ冷水を浴びせられたりした。理不尽であるが、反抗すると親の機嫌が悪くなり、時には激昂するため、嫌々従った。

◎小さい頃、前世での悪因縁を取り払うために、とロープで縛られ、正座を強要された。自分はその場から逃走したため、その後、事あるごとに「悪因縁が取り払えておらず、お前が来るとお前の悪因縁のせいで、頭が痛く身体が不調になる!」と怒られた。

心理的虐待(暴言・恫喝など)

◎参加しなければ衣食住を与えない、家から追い出す、と脅された。

◎週3回の集会への出席、発表、布教活動、聖書の勉強、年に何度か開催される大きな集まりへの参加を強制させられた。宗教活動をしたくないと言うと、「子どもは養ってもらっているんだから、親の言うことを聞け。嫌なら出て行って自力で暮らせ」と脅された。小学生の頃から何度も言われていて、ひとりで暮らしていけるわけがないので、毎日絶望しながらも親の言うとおりにするしかなかった。

◎うつ病になったとき、悪霊が取り憑いていると言われ、持ち物や洋服をたくさん勝手に捨てられた。布団から引きずり出されて、奉仕に引っ張り出された。いつも監視され、友達を作らないように見張られていた。布教活動に一生身を捧げることを、幼い頃から口に出して言うように仕向けられ、人前で宣言するように強制された。

「腕を切り落とされても信者をやめないか! 首を絞められてもやめないか? 水に沈められてもやめないか?」などと毎日繰り返し大声で質問され、「やめない」と答えるまで何度も続いた。そう答えると母親はいつも泣いて喜んでいた。

◎校歌を歌ってはならず、教室でそのことを宣誓しろ、と言われた。姉が不信心なのはお前のせいだ、不幸になる、となじられた。同世代が見ているテレビ番組(特撮戦隊モノ、バトルアニメなど)などを見せてもらえず、興味を示すとなじられた。

◎中学生のときに宗教活動をやめると宣言してからずっと、「高校は行かせてやるから、卒業したら家を出て行け」とほとんど毎日ののしられていました。

性的虐待

◎祈るために正座をしていると、男の人が毎回、太ももからふくらはぎの辺りを触ってきたが、周りの大人は、特に注意してくれなかった。そのときは、気持ち悪いな、と思っていて母に伝えたけれど何もしてくれず、周りの大人も特に何もしてくれず、ひたすらみんなで祈っていた。

◎19か20歳の頃に、霊能力者に性的虐待を受け、もう耐えられないと感じた。

◎家庭内でDVやモラハラや性的虐待を受けていたし、母自身も、長男からひどい暴力を受けていた。母は「祈ると素晴らしい勇気が湧いてくるのよ!」と毎日言っていたけど、その問題と向き合い解決する勇気はまったく見られず、むしろ現実逃避しているようにしか思えなかった。

ネグレクト(必要な食事や医療を与えないなど)

◎一般社会から事実上隔離された村を形成している団体で、行事への参加というよりも、生活すべてがその団体の方針によって拘束された状態でした。子どもは毎朝午前6時には起こされて、小学校中学年くらいになると、学校に登校する前に1時間30分程度、家畜の世話をする労働をさせられます。朝ごはんはなく、学校から帰ってからも1~2時間程度、家畜の世話をする労働をさせられます。朝夕の仕事をサボると、食事抜きにされました。

◎医療ネグレクトに遭っていました。アトピー性皮膚炎には、薬を塗ってもらえず、信仰で販売している水(ただの水道水を高値で販売しているもの)を塗られました。風邪を引いても病院に連れて行ってもらえませんでした。

◎病院になるべく行かない、薬をなるべく使わないという教えがあるので、実家にいる間は、ほとんど病院に行かなかったし、生理痛がつらいときに、痛み止め薬を隠れてしか飲めないのがつらかった。

経済的虐待(必要な金銭を与えず、むしろ財産を不当に処分する)

◎信仰しないと進学させない。ブラジャーなど必要な衣類を買い与えない。

◎大学生だったが、脱会したら、親から仕送りを止められた。

◎個人の名義での貯金などまったくさせてもらえていなかったのに、父親から「逆らうなら家から出ていけ」と言われ、経済的に締め上げることをされた。行くあてがないので仕方なく、当時付き合っていた男性の家に同棲させてもらったが、決して望んだことではなかった。家に残した母や弟のことも心配だった。

◎預金を全額盗んで寄付に使われる。財布からお札を抜かれる。ボーナス全額と給料から、4万円を除いて全額徴収される。

◎献金による経済的困窮のために、進学先が制限されることがあった。

◎献金をたくさんしているせいで、勉強に必要なものを買ってもらえなかった。

◎献金の額などは詳しく知らされていなかったが、のちに離婚する父が、母が僕の大学進学のために貯めていた資金を、教団にすべて喜捨したことに怒鳴った姿を覚えている。僕自身は貧しい子ども時代を過ごし、高校を中退して働き始めたのであまり実感はないが、もし母が入信していなければ、違った人生もあったかなと思う。

* * *

本書『宗教2世』(2022年11月25日発売)では、TBSラジオ「荻上チキ・Session」の全面協力のもと、選べなかった信仰、選べなかった家族、選べなかったコミュニティ、そして社会からの偏見に苦しんできた2世たち1131人の生の声を集め、信仰という名の虐待=「宗教的虐待」(スピリチュアル・アビュース)の実態に迫っています。

緊急出版!荻上チキ編著『宗教2世』特設サイト - 太田出版
信仰という名の虐待=宗教的虐待の実態に迫った「宗教2世問題」決定版。TBSラジオ「荻上チキ・Session」協力のもと刊行!

筆者について

おぎうえ・ちき 1981年、兵庫県生まれ。評論家。「荻上チキ・Session」(TBSラジオ)メインパーソナリティ。著書に『災害支援手帖』(木楽舎)、『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識』(PHP新書)、『宗教2世』(編著、太田出版)、『もう一人、誰かを好きになったとき:ポリアモリーのリアル』(新潮社)など多数。

  1. 「え? 撃たれた? 誰が……安倍?!」――緊急出版『宗教2世』より「はじめに」をまるまる公開!
  2. なぜ、いま、「宗教2世」なのか?
  3. 証言 宗教2世はどうサバイブしてきたか?
  4. 宗教2世が経験する、体罰や価値観の強要
  5. 2世たちの、その後
『宗教2世』試し読み記事
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