博報堂ケトルが生み出した「手口ニュートラル」とは? その思考法の基本を解説!

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世の中を沸騰させ続ける博報堂ケトル独自の思考法に迫る!
自ら課題を設定し、自ら達成ルートを決める「手口ニュートラル」の思考法を活かせば、最短距離で出口にたどり着ける! 停滞する今を打ち破る答えの一つがここにある。

※本記事は、2022年10月7日(金)に発売された『手口ニュートラル 混沌を生き抜く思考法』から、一部を抜粋し転載したものです。

手口ニュートラルとは一体何なのか

(本書)「はじめに」を読まれた皆さんは、「で、一体、手口ニュートラルって何なの?」と思ったことでしょう。手口ニュートラルとは、博報堂ケトル(以下、ケトル)という組織の根幹をなすフィロソフィーであり、「既存の手法にとらわれず、ベストな課題解決の手口をニュートラルに考えて実行する」という意味を持っています。フレームワークのように固定化したスキルや手法とは少し違い、ケトルにおける行動指針やスピリットとなっているものと言えるでしょう。

説明することがなかなか難しいものではありますが、ケトルのさまざまなメンバーに話を聞いてみた結果、「手口ニュートラル」の思考ステップを整理すると、次のような流れになるでしょう。

物事に向き合う際、①本質的な問題・目的を捉える、②俯瞰で物事の全体像を見る、③境界にとらわれない、を前提とし、その上で、④恥をかくことを恐れない、⑤できることは何でもやる、という流れです。

ざっくり簡単に言えばそういうことなので、「ええ? もったいぶっておいてそれだけ……?」「精神論じゃないか」と呆れる方もいるかもしれません。しかし、これらすべての真の意義・意味を理解し、本当に実践している方なら、この本を手に取ることなく、すでにさまざまな課題を解決しているはずです。なぜなら、手口ニュートラルはただの精神論ではなく、本質的な問題解決に向かう思考法であり、その実現を可能にする行動法でもあるからです。

ここで、誰にとっても身近な“料理”という行為を通じて、手口ニュートラルの考え方について解説しましょう。

料理をするにあたって、正しいレシピの通りに作ることにとらわれ、「レシピに書いてある材料がないから作れない」と考えてしまう人がいます。また、調味料や調理器具についても、潜在意識の中でその役割を決めてしまう人も少なくはありません。「醬油は和食に使うもの」と思い込んでいる人もいれば、「蒸し器がないからこのメニューは無理」と思い込み、最初の時点で選択肢から外してしまう人もいるでしょう。

しかし、料理をすることの本来の目的は、「正しいものを作ること」ではなく、「満足できるものを作ること」であるはずです。つまり、正しい行為にこだわるよりも「満足できる結果を出すこと」が重要なのです。そこには守るべきルールなどなく、制限もありません。キッチンを俯瞰で見回せば、さまざまなものが目に入りますが、それらをどのように使うのかは、すべてあなたの自由です。予算がなくても、レシピ通りの食材や必要な調理器具がそろっていなくても、「どうしたら自分が満足できるものを作れるのか」を考えれば、意外なものを意外な方法で使うこともでき、新しい発見をすることも少なくはないはずです。

また、満足度を維持するためには、マンネリ化させず、さらに一歩踏み込むことも必要です。キッチンにあるものを使うだけでは物足りなくなったら、そこから一歩外に出てみればいいのです。他の領域にも目を向けてみれば、使えるものはさらに広がります。例えば、ベランダや庭の葉を飾ってみることで見た目の満足度を高めることもできます。何を作りたいのか具体的なイメージが湧かない場合には、気に入っている皿などの食器からメニューを考えてみることもできます。逆に、イメージに合う皿を探しに出かけたり、理想の皿を焼きに行ったりする方法もあります。キッチンどころか、家の外に出たっていい。「こういうものを実現したい」と思ったなら、どんどん外に出て行く。そうして世界を見回してみれば、できることは無限に広がっていくのです。

ビジネスにおいては、扱う商品やターゲット、宣伝・販促の手法、業種、業界の枠組みなど、多様な前提条件や既存の境界があるものです。それらの制限の中で、競合からどう抜きん出るのか、新しい顧客をどう摑むのか等々の課題に頭を悩ませている人は少なくないでしょう。しかし、手口ニュートラルの観点で見れば、そもそも制限など一切ありません。何をどのように使うのかは自分次第であり、まさしく料理と同様に自由なのですから。

先入観や境界にとらわれず、ニュートラルな視点で広く世の中全体を見回してみれば、「あんなこともできる」「こんな分野とも連携できたら面白い」と気づくことができます。そこで、「いや、無理でしょう」「既存の手法に則らなくては」「業界が違うから連携する方法がない」などと思い込まないことがまず重要です。

正しいものを正しく作るだけでは、「それ以上」にも、「それ以下」にもなりません。もちろん、「正しいレシピ=型」を理解していることは大前提であり、既存手法の理解も過去の経験値も一切ないまま、ただ奇抜な思いつきだけを実践しても失敗に終わります。しかし、これとは逆に、既存の手法にとらわれるのみで横並びのものを作っても、現状を打破するようなことは実現できないでしょう。

大切なのは、「レシピの外に出て行け」という考え方を持つことであり、そこから新たな発想・切り口に向かうことによって、今あるものを超えていけるのです。

本来の目的や問題を捉え、その達成・解決のために、「あるものすべては、いかようにも使えるもの」と考える。そして、恥をかくこと、失敗することを恐れず、できることは何でもやって、実現に向かっていく。これこそが、ケトルが編み出した「手口ニュートラル」という思考法における基本です。

* * *

本書『手口ニュートラル 混沌を生き抜く思考法』では、世の中を沸騰させ続ける注目のクリエイティブエージェンシー・博報堂ケトルによる独自の思考法「手口ニュートラル」について、全6章に渡って解説。基本の思考法から、実践法、実用例から応用方法まで徹底的に紹介しています。

筆者について

うえの・まりこ。フリーランスのライターとして、人物インタビューを中心に雑誌媒体やWeb媒体などで執筆活動を続ける。起業家や経営者、著名人、企業人、企業人事、大学教授、各種専門家、学生まで、多岐にわたる分野の人々に取材を行い、過去19年間にインタビューした人数は2000人超となっている。

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