うれしい近況
第1回

Singer/Songwriter

文芸
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日常的な風景をやわらかく切り取ることを得意とし、ポップな歌風で人気を得て、現代短歌を牽引する歌人・岡野大嗣による新作連載。最近のあなたの「うれしい近況」は何ですか? 特別、SNSで報告するほどではないけれど、友人には話しておきたい。そんな岡野大嗣の「うれしい近況」。カフェの隣の席で話を聞くように、ゆったりとした気持ちでお楽しみください。

あなたとの電話をラジオと呼んでいた私書箱に死があふれる夜は

食券で迷ったときは左上、みたいになぐさめられてうれしい

たくさんのmで芝生を描いたから棒人間でねむりませんか

誰だろう毛布をかけてくれたのは わからないからしあわせだった

ボサノバの流れる店にいるときのつい空中を見ている時間
言いかけてやめてやっぱり最後まで話してくれた うなずきながら

ロボットのように涙が いつぶりの有観客の有にまぎれて

うれしくてさびしい副詞〈たちまち〉はライブや虹の寿命のための

いきのびる Singer/Songwriter のニュアンスで朝/夜をむかえて

鳴らさずに鳴らすアコースティックギター こころにふれるならそのように

次回の更新は、2月22日(水)予定。

筆者について

岡野大嗣

おかの・だいじ。歌人。2014年に第1歌集『サイレンと犀』、19年に第2歌集『たやすみなさい』(ともに書肆侃侃房)を刊行。18年、木下龍也との共著歌集『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』、19年に谷川俊太郎と木下龍也との詩と短歌の連詩による共著『今日は誰にも愛されたかった』、21年に第3歌集『音楽』(ともにナナロク社)を刊行。21年、がん経験者による歌集『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』(左右社)を監修した。関西の月刊誌「MeetsRegional」で「レッツ短歌!」 連載中。 反転フラップ式案内表示機と航空障害灯をこよなく愛する。

  1. 第1回 : Singer/Songwriter
  2. 第2回 : ステレオ
  3. 第3回 : 春の湯かげん
  4. 第4回 : ON AIR
  5. 第5回 : SOMEDAY
  6. 第6回 : おみやげ
  7. 第7回 : 近い遠足
  8. 第8回 : 遠い気配
  9. 第9回 : Minimum Emotion
  10. 最終回 : blanks
連載「うれしい近況」
  1. 第1回 : Singer/Songwriter
  2. 第2回 : ステレオ
  3. 第3回 : 春の湯かげん
  4. 第4回 : ON AIR
  5. 第5回 : SOMEDAY
  6. 第6回 : おみやげ
  7. 第7回 : 近い遠足
  8. 第8回 : 遠い気配
  9. 第9回 : Minimum Emotion
  10. 最終回 : blanks
  11. 連載「うれしい近況」記事一覧
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