「このM資金は本物です」M資金を信じ追い求め続ける者たち

M資金 欲望の地下資産学び
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昭和から次々と大物財界人や著名人が飲み込まれてきた「M資金詐欺」をご存知だろうか? 戦後に端を発する長い歴史を持つ、ある意味「伝説的」なこの詐欺は、暗号通貨やメタバースが世界を覆い尽くそうとする令和になってもなお、その「魔力」を持ち続けている。時代から時代へと一部の人間を次々と魅入らせてきた“幻”=「M資金」。その正体を追ったノンフィクション『M資金 欲望の地下資産』が、2022年7月26日(火)に発売された。
今回は、これまで起きた詐欺事件の傾向から、M資金詐欺の被害に遭いやすい人の特徴について一部ご紹介する。

M資金信者のひとつ『M資金トレジャーハンター』

蔵人会長はこの数年前にもM資金詐欺の被害にあっていたために、M資金詐欺師たちの間では『M資金信者の典型』だと噂されていた。

誰が何をどのように信じるかはその人の自由だが、詐欺業界ではM資金話を信じ込んでいる人間のことを、新興宗教の信者になぞらえて『M資金信者』『M資金狂い』と呼んでいる。そして、M資金信者は2種類に大別される。

ひとつめは『M資金の存在を本気で信じ込み、M資金をその目で見たいがために積極的に活動し、M資金詐欺を展開する詐欺師たちに指示されるがままに動かされ、結果的に自ら詐欺師の作ったM資金話を拡散するブローカーに成り果て、積極的にM資金詐欺師たちと関わり、詐欺行為を助長してしまうタイプ』だ。彼らはM資金の金が目的ではなく、その存在を確認することが目的であるため、詐欺師が客から騙し取った金を受け取ることも考えず、詐欺師たちに都合よく利用されている人間たちだ。

このタイプには大手企業幹部、元警察幹部、元自衛隊幹部、元官僚、議員秘書など、高齢者で社会的信用を持つ顔ぶれが目立ち、決して金に困っているタイプではない。そんな彼らは、豊富な人脈の中でM資金詐欺師と知り合い、その話を信じ込んだあげくM資金詐欺師に対して悪気なく次々と被害者になりうる人物を紹介してしまうのである。

M資金が発動(融資完了)された際、彼らには紹介料名目で一定の手数料が渡される約束を詐欺師から約束されているのだが、彼らの本音は金を稼ぐことよりもM資金の存在を確かめることにある。

元警察幹部や元幹部自衛官までもがどうして? と疑問に思われるだろうが、徳川幕府の隠し財宝と言われる徳川埋蔵金であったり、豊臣家の豊臣埋蔵金であったり、バルチック艦隊の金塊が眠る沈没船の財宝伝説など、この世には埋蔵金伝説や秘宝伝説がいくつもあり、それを信じて何十年も調査を継続している人たちがいるのはご存じだろう。

1980年代には、日本船舶振興会会長の笹川良一もバルチック艦隊の金塊探しに情熱を傾けたぐらいである。ちなみにバルチック艦隊の金塊探しでは、対馬沖と鬱陵島付近の海底からプラチナなどのインゴットが発見され、その所有権を巡ってソビエト連邦(現:ロシア)を巻き込んで国際的な政治問題に発展したほどだった。

たとえ社会的信用がある人物であっても、世界各国に眠る財宝を探し求めるトレジャーハンターのようにM資金を『実在する財宝』と信じ、追い続けている者が確実に存在する。

よってM資金詐欺師グループの一員と化して詐欺に加担していることはあくまでも結果論であり、自分たちは『純粋なM資金トレジャーハンター』であり、犯罪目的ではなく純粋な冒険家のような存在だと信じ込んでいるのだ。

M資金トレジャーハンターである彼らは、社会的地位や信用度をM資金詐欺師たちに利用され、知らず知らずのうちに自分と同類のM資金トレジャーハンターたちで構築されたM資金話を拡散するネットワークの一翼を担ってしまっているのだった。

元大手企業幹部で、今もM資金を追い続けているトレジャーハンター気取りのY氏は「そういう詐欺があることはもちろん知っていますが、私たちが追っているM資金は本物です」と、堂々と話す。

私がその根拠を尋ねると、Y氏は分厚い鞄の中からいくつもの資料を取り出して見せて
「こういう資料があるから事実です」と真剣な表情で告げた。

しかし、その資料はほとんどのM資金ブローカーと呼ばれる怪しい人たちが持ち歩いているありきたりの資料と同じ物で、この人だけが特別に持っている資料ではなかった。

そして資料の出所について質問をすると「極秘案件ですのでそこまでは言えない」と口をつぐむのだった。

これがM資金信者やM資金狂いと呼ばれる人たちの典型的なタイプのひとつである。

コロワイドの蔵人会長の件で言えば、さしずめ武藤、X、YらがM資金詐欺師たちで彼らに蔵人会長を紹介した大学関係者がM資金ブローカーに身を落としたM資金トレジャーハンターという関係性になるだろう。

* * *

※この続きは現在発売中の『M資金 欲望の地下資産』にてお読みいただけます。

本書では、今回紹介した内容のほかに、全5章に渡ってM資金の誕生から現在も続く令和のM資金詐欺の手口、詐欺師たちの生態、M資金に群がる大手企業などの経済人、M資金最新の手口や次の“生贄”とされる危険について記されています。本書内にはM資金関連年表も掲載。令和のM資金詐欺問題に立ち向かうための必読書です。

筆者について

ふじわら・りょう。週刊・月刊誌や各種web でアウトロー分野の記事を多数執筆。マンガ原作も手がける。万物斉同の精神で取材・執筆にあたる。

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