今、世界ではなにが起きているのだろう?『図解でわかる 14歳からの地政学』では、地政学(国際的な政治・軍事に関わる事柄を、地理的な様々な条件を基に考察すること)というフィルターを通して、世界の今を俯瞰しています。ここでは、本書からロシア情勢に関する記事をご紹介します。地球に生きる「引っ越しのできない隣人同士」が共存するための、理想と理性の地政学を共に学びましょう。
アメリカが目指したソ連包囲網
マッキンダーの「ハートランド」という地政学の概念は、第二次世界大戦後の対ソ連戦略を模索するアメリカ国防省で脚光を浴びます。1942年に地政学者ニコラス・スパイクマンは、ハートランドを包囲する周辺地域として「リムランド」構想を提唱。ハートランドであるソ連の拡張を外輪(リム)で防衛しようというものでした。
周りに味方の外輪を欲していたソ連は、チェコスロバキアを制圧して、ベルリンにも侵攻。社会主義圏を広げていきます。一方、大戦で疲弊した西ヨーロッパ諸国は、ソ連と対抗するためにアメリカの軍事力を盾に、防衛同盟NATO(北大西洋条約機構)を誕生させます。
ところが西の防御が整った頃、東のリムランドの中に社会主義国、中国が誕生。さらに北朝鮮、ベトナムが社会主義陣営に加わり、リムランドに綻びが生じます。
アメリカがリムランドの防衛に国力を注いでいる間に、ソ連は大陸間核弾道ミサイルや有人宇宙飛行でアメリカに先行します。この東西冷戦の時代、資本主義と社会主義の戦いは永遠に続くかと思われました。ところが、1991年、ソ連はあっけなく崩壊します。一体何が起こったのでしょうか。
社会主義国ソ連は内側から病んでいました。市場のニーズとは無縁の計画経済の破綻、共産党官僚の特権化と腐敗、市民の不満を押さえつける秘密警察の横暴。さらにソ連軍のアフガニスタン侵攻が、決定的な財政危機を生み出します。
そんな弱体化したソ連に誕生したゴルバチョフ政権は、ペレストロイカ(建て直し)に乗り出し、ついには共産党一党独裁を終了させます。しかし共産党という国家のタガが外れるや否や、共和国が次々と独立。瞬く間にバラバラになったのです。このソ連崩壊を、中国は大きな教訓とします。
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本書では、ロシア・ウクライナ情勢のほかにも、アジアやアメリカ、中東などの地政学的危機の現場についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳からの地政学』(インフォビジュアル研究所・著、鍛冶俊樹・監修)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中。地球上のすべての隣人のために、今一度世界情勢を見つめなおしてみましょう。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第19弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。地政学のほかに、ごみ、水資源、気候変動などの環境問題、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+、防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。
鍛冶 俊樹
かじ・としき 軍事ジャーナリスト。元航空自衛隊幹部。『日本の安全保障の現在と未来』で第一回読売論壇新人賞受賞。著書に『領土の常識』『国防の常識』(共に角川新書)、『戦争の常識』(文春新書)など、監修に『超図解でよくわかる!現代のミサイル』(綜合図書)、『イラスト図解戦闘機』(日東書院本社)。配信中のメルマガ「鍛冶俊樹の軍事ジャーナル」は、メルマ!ガ オブザイヤー2011受賞。