2022年9月末、NASA(アメリカ航空宇宙局)が「アポロ計画」以来となる宇宙飛行士による月面着陸探査計画(通称「アルテミス計画」)における大型ロケットの打ち上げの延期を発表しました。ハリケーンの接近や機材トラブル、あらゆる要因が影響するロケットの打ち上げ。そもそも重たいロケットはどうして宇宙にまで飛び立てるのでしょう?
『図解でわかる 14歳からの宇宙活動計画』(インフォビジュアル研究所・著)では、宇宙の秘密や宇宙開発の今、そして未来のプロジェクトまでをカラー図版満載で紹介!
ここでは、その一部を特別に公開します。
今回は、ロケットが飛び立つ仕組みについて学びましょう。
ロケットの推進力と重量
ゴム風船を膨らませて手を放すと、風船は勢いよく飛んでいきます。吹き出した空気の反動で、反対方向に推進力が生まれるからです。ロケットが飛ぶのも、これと同じしくみです。ロケットは、風船と違って重いので、燃料を燃やして爆発させることで、強い推進力を得ています。
地球の重力圏を脱出して上昇するほどの強い推進力を得るには、それに比例した量の燃料が必要です。すると今度は、燃料の重さの分、ロケットの速度が遅くなってしまいます。そのためロケット開発においては、推進力と重量が最適なバランスを保つ規模と形態が、常に追求されてきました。
前回「『宇宙はどこから始まるの?』空と宇宙の境界線は上空100㎞⁉」で図示したように、地球を周回する軌道は複数あり、どの軌道を目指すかによって、ロケットの種類も異なります。上空500㎞の低軌道に数㎏の小型衛星を打ち上げるには、固体燃料を積んだ全長20m程度の小型ロケットが活躍します。一方、日本のJAXAが開発した次期主力ロケットH3は、3万6,000㎞の静止軌道に6トン以上の搭載物を打ち上げる能力をもちますが、全長63mにもなる巨大なものです。
ロケットは、発射地も選びます。地球の自転速度を利用して発射速度を速めるには、可能な限り赤道に近く、真東に向けて発射できる場所が望まれます。発射されたロケットから人工衛星が放出され、衛星の遠心力と地球の引力が釣り合うポイントに到達すれば、そこが地球を周回する軌道です。
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本書では、現在分かっている宇宙についての情報や、宇宙開発の歴史や発展、予想も含めた今後の展開についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳からの宇宙活動計画』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。