人間社会では、少子化や人口の減少幅が拡大していることが度々問題視されますが、生き物全体を見たらどうでしょう? 生物多様性の歴史を見ていくと、人間とその他の生き物との歪なバランスが見えてきます。
10月に発売された『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)では、地球だけがもつ奇跡の多様性を守るために、今わたしたちが知るべきことを分かりやすく解説しています。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、人口の増加が生物多様性に与える影響について。
減少する生物と増加する人類
地球上には、まだ発見されていない生物が数多く存在し、発見された生物でも、その生態や生息分布が、詳しくわかっていないものもあります。そのため、すべての生物の多様性とその変化を正確に知るのは極めて困難ですが、生物多様性の豊かさを測るひとつの目安として、「生きている地球指数(Living Planet Index:略してLPI)」と呼ばれるものがあります。
世界自然保護基金(WWF)の「生きている地球レポート2020」は、脊椎動物(哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類)4,300種以上の約21,000の個体群を調査した結果、1970~2016年の間に、LPIが68%も減少したと報告しています。生物多様性が大きく損なわれた過去約50年の間に、いったい何が起きたのでしょう。
多くの生物が減少しているのとは逆に、右肩上がりに増加しているのが、私たち人類です。約1万年前には400万人ほどだった人類は、長い時間をかけて少しずつ人口を増やしてきましたが、18世紀後半の産業革命を機に急増し、10億人を突破。1970年には過去最高の増加率を記録して約37億人となり、それから半世紀経ったいまや、80億人に迫ろうとしています。
人口が増えれば、その分、食料や住む場所が必要になります。さらに、科学技術の進歩と世界貿易の拡大によって、人類は地球上の隅々にまで活動範囲を広げていきました。こうした人間の活動が、さまざまな生物や生態系を損ねています。
* * *
本書では、生物多様性の基礎知識や、生きものたちにしのび寄る危機、人類と生物の関係についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る生物多様性』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。