グレタ・トゥーンベリさんが気候変動の対策を訴え、世界から注目を集めた2018年から6年が経ちました。気候変動への問題意識は年々高まりを見せています。
一方で、複雑な気候変動の問題について、いま何が起きていて、そもそもなぜ問題なのかが把握しきれずにいる人も少なくないはずです。
2020年7月22日に太田出版より刊行した『図解でわかる 14歳から知る気候変動』(インフォビジュアル研究所・著)では、地球の気候システムから、いま起きている大変動、さらに人類にできることまで、気候変動の問題を網羅的に、そして図を用いてわかりやすく解説しています。
刊行以来ご好評をいただいている中、この度4度目の増刷が決定いたしました。その記念として、一部をOHTABOOKSTANDで全6回にわたって公開します!
輸送を短縮する北極海航路
温暖化(おんだんか)によって、北極の氷が溶けることが懸念(けねん)されていますが、その一方で、これを利用しようとする動きもあります。
そのひとつが、「北極海航路」と呼ばれる船のルートです。これまで東アジアとヨーロッパを結ぶ航路としては、エジプトのスエズ運河(うんが)を通る南回りのルートが一般的でしたが、近年、北極海を通るルートに注目が集まっています。現在、カナダ側を通る「北西航路」とロシア側を通る「北東航路」の2つの航路があり、ロシア政府は北東航路を北極海航路と呼んでいます。
北極海航路は、1932年からソ連(のちにロシア)によって管理されてきましたが、行く手を氷に阻(はば)まれる難ルートで、あまり有効に利用されていませんでした。しかし、温暖化で海氷(かいひょう)が減少したため、夏の一定期間の利用が可能になったのです。
このルートを使うと、南回りより航行距離が4 割ほど短くなり、燃料費も安くなるため、日本をはじめとする各国が、すでに利用を始めています。
北極海に眠る天然資源
北極海が注目を集める理由はもうひとつあります。アメリカ地質調査所によると、世界中の未発見の石油や天然ガスの22%は、北極海にあるというのです。
そのため、ロシア、カナダ、アメリカ、デンマーク、ノルウェーなどの周辺国が、天然資源の利権(りけん)をめぐって、かけ引きを繰り広げています。さらに中国も、北極海に眠る資源を開発し、北極海航路で輸送する構想を抱いて動き出しています。
にわかに始まった北極海争奪戦(そうだつせん)ですが、CO₂ 排出によって引き起こされた温暖化のおかげで、CO₂を排出する化石(かせき)燃料が新たに発掘されるとは、なんとも皮肉(ひにく)な話です。
『図解でわかる 14歳から知る気候変動』(インフォビジュアル研究所・著)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、日本の宗教、ごみ問題、水資源、気候変動などのSDGsに関する課題や、地政学、資本主義、民主主義、心のケア、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。