「生きるための食べ物」はいつから「利益のための食べ物」になったのか。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』では、人類が歩んだ食の歴史と、食のための産業が引き起こした地球規模の問題について、図解イラストとともにわかりやすく解説しています。今回は、穀物の輸入産業について。穀物の国際貿易をコントロールする「穀物メジャー」とは一体どんなものなのでしょう。わたしたちと「食べ物」のこれからについて、一緒に考えましょう。
主食である穀物が利益の対象に
2020年の世界人口は、約78億人。年々増加する人口を支え、食料危機に備えるためには、主食となる穀物の増産が急がれます。自国で十分な量を生産できればよいのですが、それができない国は、よその国から輸入しなければなりません。この穀物の国際市場をコントロールしているのが、穀物メジャーと呼ばれる巨大企業です。
穀物メジャーが注目されるようになったのは、1970年代のこと。深刻な食料不足に陥ったソ連(当時)は、敵対関係にあったアメリカから、極秘裏に大量の穀物を買い付けました。その取引を担ったのが、穀物メジャーです。それまでの輸出は、国内で余ったものを処理することが目的でしたが、これを機に、利益を求めて新たな市場を開拓する戦略に転換。いまや世界の穀物市場は、アメリカのカーギル、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ブンゲとフランスのルイ・ドレフュス、それぞれの頭文字をとってABCDと呼ばれる4強を中心とした穀物メジャーに独占されています。
流通網や関連事業を独占
穀物メジャーは、自ら穀物を生産することはありません。天候に左右される農作業は農家に任せ、流通を一手に担います。エレベーターと呼ばれる巨大穀物倉庫や、トラック、貨車、貨物船などの輸送手段を自社で保有し、世界中にネットワークを張り巡らせて、需要と供給を結びつけます。
穀物メジャーは、収穫期の異なるさまざまな国から穀物を調達するため、どこかの国が不作でも、常に安定した供給が見こめます。小規模農家から見れば、自分で販路を開拓するより、穀物メジャーに買い取ってもらったほうが、手間が省けます。
こうしたメリットがある一方、穀物メジャーは、穀物の価格さえ実質的に支配しています。さらに近年では、加工分野や種子・飼料の販売事業にも乗り出し、ここでも独占的な利益を上げようとしています。
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本書では、人と食の歴史やSDGsに関わる国の食の問題、日本の食の問題などについてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第19弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。