「生きるための食べ物」はいつから「利益のための食べ物」になったのか。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』では、人類が歩んだ食の歴史と、食のための産業が引き起こした地球規模の問題について、図解イラストとともにわかりやすく解説しています。今回は、わたしたちの肉食が地球に与える影響について。牛のゲップが地球温暖化を加速させる? 一体どういうことなんでしょう。
大量の水を消費する畜産
世界の牛肉消費量は、年間約6,000 万トン。肉の消費量が増大している一方で、欧米ではビーガンと呼ばれる食事スタイルが注目を集めています。これは、肉を食べない菜食主義をさらに徹底し、魚、乳製品、卵など、動物性食品をいっさい食べないというもの。以前から、動物福祉の観点から肉食への批判はありましたが、いま新たに問われているのが、地球環境への影響です。
世界では局地的な水不足が問題になっています(*詳しくは、本書P44~45「Part2 人と食の大問題② 穀物生産地の水不足が食糧危機の引き金を引く」をお読みください)。一番下の図は、製品の生産から廃棄まで、さまざまな工程で使われる水の全体量を示した「ウォーターフットプリント(水の足跡)」の数値です。食品のなかで、牛肉を筆頭とした肉類の数値が特に高くなっているのは、家畜の飼育だけでなく、エサとなる穀物などの生産にも大量の水を必要とするためです。
牛のゲップでメタン発生
一方、製品の生産から廃棄までの工程で、地球温暖化を促進する温室効果ガスがどれだけ排出されているかを示すのが、「カーボンフットプリント」です。こちらもやはり肉類の数値が高く、なかでも牛肉は突出しています。牛などの反すう動物は、ゲップによって、CO₂よりも濃度の高いメタンという温室効果ガスを吐き出すからです。
さらに、畜産は広大な土地を要するため、CO₂を吸収してくれる森林の伐採が進み、温暖化が促進されてしまいます。これらのことから、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動対策のためにも肉食を減らすべきだと提言しています。
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本書では、人と食の歴史やSDGsに関わる国の食の問題、日本の食の問題などについてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第19弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。