「生きるための食べ物」はいつから「利益のための食べ物」になったのか。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』では、人類が歩んだ食の歴史と、食のための産業が引き起こした地球規模の問題について、図解イラストとともにわかりやすく解説しています。今回は、食料の無駄について。私たちの食卓に上がるまでの間にたくさんの食料が捨てられています。「もったいない!」だけじゃない問題について一緒に学びましょう。
食料の無駄は温暖化につながる
国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界では、生産された食料の約3分の1に当たる年間約13億トンもの食料が、廃棄されているといいます。なぜそんなに大量の食料が捨てられてしまうのでしょう?
すぐに思い浮かぶのは、家庭や飲食店での食べ残し、食料品店での売れ残りなどです。FAO は、これらを「食料廃棄」と呼ぶ一方、生産・貯蔵・輸送・加工の段階で捨てられるものを「食料ロス」と呼んで区別しています。店頭に並ぶ前に、形をそろえるためにカットされたり、品質や見た目が悪くて捨てられたりするものが多いのです。SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」でも、食料ロスの削減と食料廃棄の半減をターゲットのひとつに掲げています。
特に欧米先進国では、食料ロス・食料廃棄ともに多く、1人当たり年間300㎏近くの食料が捨てられています。一方、途上国では、消費段階で捨てられることは少ないのですが、冷蔵設備や加工施設の不備によって、生産の初期段階で貴重な食料が損なわれていることが問題視されています。
食料ロス・食料廃棄は、食料が無駄になるだけではありません。食料をつくって消費者に届けるためには、大量の水やエネルギーが使われ、その過程で大量のCO₂が排出されています。また、食品は水分を多く含むため、ごみとして燃やすときに、多くのエネルギーを必要とし、その分、多くのCO₂を排出します。食品の無駄を減らすことは、水やエネルギーの無駄をなくし、CO₂の排出量を減らす気候変動対策のひとつでもあるのです。
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本書では、人と食の歴史やSDGsに関わる国の食の問題、日本の食の問題などについてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から知る食べ物と人類の1万年史』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第19弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+防災などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。