「民主主義の危機」というフレーズを最近よく耳にしますが、そもそもどういう意味なのでしょうか。それがなぜ歓迎されざるべきことなのか、私たちは明確に言葉にできるでしょうか。古代にすでに存在した民主主義の起源・基礎から、最先端のITとAIによるデジタル直接民主主義までをコンパクトな通史として俯瞰しつつ、これからの世代の民主主義の「あり方」を具体的に考えるための情報集がインフォビジュアル研究所・編『図解でわかる 14歳から考える民主主義』です。
ここでは、本書から一部をご紹介していきます。(全6回)
プーチン大統領の国内支持率80%
2022年2月、ロシアのプーチン大統領は、突然ロシア軍によるウクライナ侵攻を開始しました。この国際法を無視した軍事侵攻によって、ウクライナの一般市民に多大な犠牲が出るに及んで、国際世論は、プーチン大統領に対して激しい怒りを募らせました。このような暴挙に走るのは、長く独裁権力を振るってきたためである、と。
しかし、下の図表を見てください。これはプーチン氏が大統領に就任してから2022年2月までの、ロシアで起きた主要な出来事を時系列に並べたものです。赤紫色の折れ線グラフは、プーチン大統領に対する国民の支持率の推移を表しています。
プーチン氏は、2000年に大統領選挙で選出されてから、途中4年間の首相期をはさみ、2012年に復帰してから現在まで大統領職にあります。4回の大統領選挙を勝ち抜き、プーチン氏を支持する政党「統一ロシア」も、議会選挙で勝利し続けてきました。その間、プーチン大統領の支持率は常に60%以上を保っています。こう見ると、民主的な手続きで、市民によって選ばれた指導者であるように見えます。
しかし、この図をより詳しく見ると、別の事実が浮かびます。支持率が低下したときには、反対勢力や批判的なジャーナリストに対する弾圧や暗殺事件が起きています。しかし、ロシアが戦争を始めると、支持率が上がります。ウクライナ侵攻後も、支持率は80%を超えました。ここで素朴な疑問が浮かびます。なぜロシアの人々は、世界中から独裁者として批判されるプーチン氏を支持しているのでしょう。
* * *
本書では、民主主義の誕生や歴史、これからの課題についてわかりやすく解説しています。『図解でわかる 14歳から考える民主主義』(インフォビジュアル研究所)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。なお、「図解でわかる14歳からの~」は現在第20弾まで刊行されている人気書籍シリーズ。ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、宇宙開発、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
2007年より代表の大嶋賢洋を中心に、編集、デザイン、CGスタッフにより活動を開始。ビジュアル・コンテンツを制作・出版。主な作品に『イラスト図解 イスラム世界』(日東書院本社)、『超図解 一番わかりやすいキリスト教入門』(東洋経済新報社)、「図解でわかる」シリーズ『ホモ・サピエンスの秘密』『14歳からのお金の説明書』『14歳から知っておきたいAI』『14歳からの天皇と皇室入門』『14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来』『14歳からの地政学』『14歳からのプラスチックと環境問題』『14歳からの水と環境問題』『14歳から知る気候変動』『14歳から考える資本主義』『14歳から知る食べ物と人類の1万年史』『14歳からの脱炭素社会』『14歳からの宇宙活動計画』(いずれも太田出版)などがある。