侵略や災害、心無い事件や事故など、私たちの生活にはあらゆるニュースが飛び込んできます。グロテスクな映画を観て体が痛いと感じるなど、人間は他者の体験を自分のことのように感じる能力があります。時には、その共感力がストレスになってしまうようです。
9月に発売された『図解でわかる 14歳からのストレスと心のケア』(社会応援ネットワーク)では、様々なストレスに向き合い、解決に導く方法を紹介しています。ここでは、その一部を抜粋し、紹介していきます。
今回は、“共感ストレス”について。
人は“共感”することでストレスを感じてしまう
人には共感力というものがあります。たとえば、友だちの失恋の話にもらい泣きしたり、きょうだいの合格の結果に喜んだり。テレビのドキュメンタリー番組に出てくる人の生きざまに感動するのも共感力があるからです。このように共感力は人の素晴らしい資質のひとつですが、共感力が高いためにそれが疲労やストレスにつながる場合もあります。
災害や侵略被害の報道をみて、胸が苦しくなるような時は、共感疲労の可能性があります。つらい状況にある人に共感しながらも自分が何もできないことに無力感を覚え、疲れてしまうのです。さらに、同じ内容を見聞きしても全く関心を示さない、共感しない人に怒りを感じることもあります。
こうした反応を二次的外傷性ストレス、共感ストレスといいます。近年のストレス研究では、共感ストレスを受けやすい看護師やカウンセラー、被災地ボランティアなどへの対処が行われています。
たとえば、同じようなつらい気持ちをもっている人たちが、気持ちを語り合う「ピアサポート」は、共感ストレスへの対処のひとつです。気持ちを分かち合うことで心の負担を軽くします。気になっている出来事について、共感できそうな人と話し合う場をもつのもよいでしょう。
また、災害や戦争などの出来事の前で無力感を感じる時は、今の自分にできることとできないことを分けて書き出すなど、整理することで冷静になれます。たとえば、東日本大震災後は、多くの人が共感ストレスを抱えましたが、それをきっかけに、目の前の日常の大切さに気づき、家族や友人を大切にしようと、それまでの言動をあらためて、自らを成長させた人も多かったことも明らかになりました。
優しい気持ちを活かすためにも、共感をストレスにしないように、自分の心を守りましょう。
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本書では、他にも「友だちに本音を話せない」「親にガミガミ言われるのがイヤ!」など、具体的な相談内容を取り上げ解説。学校の保健室や、児童相談所などにも置いていただきたい一冊となっています。『図解でわかる 14歳からのストレスと心のケア』(社会応援ネットワーク)は全国書店・通販サイトや電子書店で発売中です。図版が多くわかりやすいと好評の書籍シリーズ「図解でわかる~」は、ごみ問題、水資源、気候変動などの環境課題、地政学、資本主義、民主主義、食料問題、LGBTQ+などなど、今だから学び直しておきたいワンテーマを1冊に凝縮して3~4カ月毎に刊行されています。
筆者について
全国の小中学生向けの『子ども応援便り』編集室が、2011年東日本大震災時、「メッセージ号外」を発行したのを機に設立。同時に文部科学省等から委託を受け、被災地に「子どもの心のケア」の出張授業や教職員向けの動画配布を行う。以降、全国の4、5、6年生全員に『防災手帳』を無料配布するなど、学校現場からの「今、これが必要」の声に徹底して応えるプロジェクトを展開。心のケア、防災、共生社会、SDGsの出張授業や教材作り、情報発信を続ける。コロナ禍では、「こころの健康サポート部」を立ち上げた。書籍に『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+』(太田出版)など。